研究課題/領域番号 |
23650425
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
欅田 尚樹 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 部長 (90178020)
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研究分担者 |
内山 茂久 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (40524236)
稲葉 洋平 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (80446583)
中込 秀樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20375611)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電子たばこ / アクロレイン / カルボニル化合物 / 有害化学物質 |
研究概要 |
【目的】電子たばこの安全性に関しては、WHO, FDA等で懸念が表明されている一方、系統的な調査が十分に実施されていないのが実情である。本研究では、電子たばこによる吸入蒸気に有害因子が存在しないかを、化学分析を実施することによりリスク評価を行うことを目的とした。【方法】電子たばこの蒸気に含まれる化学物質濃度評価:アクロレインを含むアルデヒド類の捕集には、新たに開発したカートリッジ、すなわちハイドロキノン(HQ)含浸シリカと2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)カートリッジを連結し捕集し、アセトニトリル溶出溶液中でDNPHによるヒドラゾン誘導体にして高速液体クロマトグラフ(HPLC)にて分析測定した。あわせて発生する化学物質の生成メカニズム等の検討を行った。【結果とまとめ】国内で販売されている電子たばこについて測定した結果、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、グリオキサール等、多くの有害なカルボニル化合物が高濃度で検出された。電子たばこ専用カートリッジに含まれる液体を分析した結果、主成分はグリセロールやグリコール類であった。そこで、様々なグリコール類をコイル状のニクロム線に塗布した模擬電子たばこを作製し、一定の電圧を印加し、そこから発生する気体を分析したところ、印加電圧に応じてエチレングリコールからグリオキサールが,プロピレングリコールからメチルグリオキサールが,グリセロールからアクロレインが発生することが明らかになった。また、これら有害物質の発生量にはバラツキがあり、銘柄間のバラツキ、サンプルロットごとの発生量のバラツキ、サンプルロット内のバラツキが認められ、電子たばこから有害なカルボニル化合物が、非意図的に高濃度で発生することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子たばこから発生する化学物質の発生については、発生する化学物質を同定し、定量するだけでなく、その発生メカニズムを解明することができ、製品により非常に大きなバラツキがあること、それに伴い非意図的に有害なカルボニル化合物が発生していることを解明した。これらに関しては、当初の想定以上に順調に研究は進んだ。一方、電子たばこに関する使用実態および使用における意識についてアンケート調査を実施し、国内における使用の現状を把握する点に関しては、今年度は十分に取り組むことができなかったため、次年度以降に研究を推進していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
電子たばこから発生する化学物質の分析を継続するとともに、今年度十分に実施することができなかった、使用実態および使用における意識についてアンケート調査を中心に研究を実施し、今年度得られた成果とともに論文発表を含め情報公開を進めていく。これらにより、未成年者でも容易に購入可能な電子たばこの使用により非喫煙者の喫煙行動につながる行為の予防、国民が新たな有害化学物質に曝露される機会の増加を予防するための情報を提示していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
化学分析のための消耗品、アンケートの実施費用、実験補助およびデータ整理のための謝金を中心に使用する予定である。
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