研究課題/領域番号 |
23650429
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田中 喜代次 筑波大学, 体育系, 教授 (50163514)
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研究分担者 |
中田 由夫 筑波大学, 医学医療系, 助教 (00375461)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腹部内臓脂肪 / 心血管系疾患危険因子 / 肥満者 / multiple-slice法 / 腹部皮下脂肪 / 横断研究 / MRI |
研究概要 |
腹部内臓脂肪の蓄積が心血管系疾患の危険因子となることは多くの研究により明らかとなっている.しかしながら,腹部内臓脂肪を定量化する方法について,十分な検討がなされていない.そこで,平成23年度は,Magnetic Resonance Imaging system(磁気共鳴画像装置:MRI)によるmultiple-slices法を用いて,日本人肥満者の腹部内臓脂肪の分布および心血管疾患危険因子との関連性を横断的に検討し,腹部内臓脂肪を定妥当に反映するための測定部位について考察した.100名の肥満男性を対象に,MRIによる腹部内臓脂肪体積および面積の測定および血液検査をおこなった.データに欠損値のなかった対象者は82名であり,この82名のデータを使用し,統計解析を施した.得られた知見は以下のとおりである.(1)MRIによるmultiple-slice法を用いて腹部断面画像24枚を撮影し,腹部内臓脂肪の分布を評価したところ,腹部内臓脂肪体積と最も関連の強い撮影部位は,従来から用いられている臍位ではなく,臍位より9 cm上部であることが明らかとなった.したがって,内臓脂肪評価部位について再考が必要である.(2)腹部内臓脂肪と心血管系疾患危険因子との関連性について分析した結果,腹部内臓脂肪と有意な関連性がみられたのはHDLコレステロールおよび中性脂肪であった.HDLコレステロールにおいては,臍位より5~16 cm上位に分布している腹部内臓脂肪体積と,中性脂肪においては,臍位より3~15 cm上位の腹部内臓脂肪体積と有意な関連がみられた.以上の結果より,腹部内臓脂肪を評価する際,臍位より3~16 cm上位を計測することが有益であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究目的は,腹部内臓脂肪を定量化するための測定部位の検討であった.研究実績概要の通り,測定部位に関する一定の見解を得ることができたことから,おおむね順調に進展しているといえる.また,平成24年度の研究課題に向けて,減量介入準備,すなわち医療関係スタッフや運動指導スタッフの調整,会場の確保,対象者募集の手続きが終了し,すでに研究可能な状態に整えある.ただし,本研究課題を明らかにするための対象者数が十分であるとはいえないことから,平成23年度の課題については今後も研究を継続し,より明確な知見を得られるように努めたい.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において提案した腹部内臓脂肪評価部位について,より明確な測定部位を得るために,横断研究および縦断研究(減量介入研究)を実施する.腹部内臓脂肪のリスクは中年男性において大きいため,対象者を中年肥満男性に絞ることとする.横断研究では,腹部内臓脂肪の測定および心血管系疾患因子の把握を継続し,測定部位の妥当性を検討する.さらに,肥満者のみならず,標準体重者のデータ収集を試み,腹部内臓脂肪と心血管系疾患因子の関連を明らかにする.縦断研究では,減量介入プログラムを提供する.減量介入プログラムは,食事改善プログラム,運動実践プログラムおよび食事改善と運動実践の併用プログラムの3種類とし,平成23年度において提案した部位により定量化した腹部内臓脂肪体積および面積,体力および血液検査結果をもとに,介入プログラムの有効性を検討する.さらに,介入プログラムによって変化しやすい腹部内臓脂肪部位の特定および,心血管疾患危険因子の改善率と腹部内臓脂肪体積および面積との関連より,腹部内臓脂肪評価に適切である部位について提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
測定および検査に協力不可欠である医療関係者(医師,看護師,放射線技師など),減量介入プログラムに協力不可欠である教室スタッフ(体育指導専門スタッフ,健康運動指導士,管理栄養士など)に対する謝礼,測定および検査に必要な物品および検査費,関係スタッフとの打ち合わせおよび研究成果報告に必要な旅費などを予定している.
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