研究課題/領域番号 |
23650430
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋本 崇之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00323460)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / メカニカルストレス / 物理刺激 / 力学刺激 / 未分化性 / Nanog / ES細胞 / iPS細胞 |
研究概要 |
再生医療におけるヒトiPS細胞・ES細胞の臨床応用には,感染性を排除した大量培養法が必要である.しかし現在,主に使われているiPS細胞・ES細胞の維持培養法は,胎仔マウス線維芽細胞との共培養であり,また培養液中に動物由来物質を含んでいる.将来的に,動物由来細胞・動物由来物質を排除する為,ヒト血清・フィーダー細胞の使用が試みられているが,ヒト由来物質による汚染が否定できない.そこで本研究では,これら外来因子を用いずに,物理的刺激を用いてiPS等幹細胞の未分化性を維持する培養法の開発を試みた. 本年度は,フィーダー細胞フリーで維持培養可能なマウスES細胞(CCE)を用いて,未分化性を維持するための物理的刺激の最適化を行った.すなわち,マウスES細胞を底面がシリコーンの培養プレート(Flexcell plate)に培養し,マウスES細胞を未分化に増殖させるために必須なLIF(Leukemia Inhibitory Factor)の存在下/非存在下で10%,0.1Hzの引張り応力を負荷し,2日間培養後に細胞を回収した.未分化マーカーとして,Nanog,Oct-4,Sox-2,CD34遺伝子をRT-PCRで評価した.この条件を基準として,引張りの程度を0%,5%,20%,引張り周期を0.05Hz,0.16Hz,0.5Hzで同様の評価を行い,未分化性を維持するための物理的刺激の最適化を行った.これらの結果,10%,0.16Hzの条件で,LIF非存在下においてもNanogの発現が維持される傾向にあった.次に引張り刺激がNanog発現を誘導するメカニズムを検討するため,いくつかのシグナル関連分子について,抗リン酸化抗体を用いて,引張り刺激に応答するシグナル経路の同定を試みた.その結果,PI3K/Aktシグナルがこの応答に関与している可能性が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度以降に予定していた,「物理的刺激によりiPS・ES細胞の未分化性を維持するメカニズムの解析」にまで,研究が進展したため.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は予想以上に進んでいるため,当初の研究計画を前倒しでさらに推進する.研究内容に関しては変更はない.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも進展があったため、平成24年度に実施する予定であった「物理的刺激により幹細胞の未分化性を維持するメカニズムの解析」実験などに使用する経費を前倒しで研究計画を推進した. 結果、最終年度の平成25年度に請求する金額が減るものの,実験の頻度が減少することから研究を遂行する上では大きな問題はない。なお、平成25年度はこれらの実験計画の継続を予定しているが、研究計画の前倒しにともなって実験を早期に終了し、解析結果の詳細な分析や学術誌上発表のための研究成果のとりまとめ期間を十分に確保したうえで、研究目的の達成を目指す。
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