研究課題/領域番号 |
23650431
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
出村 慎一 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20155485)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 転倒予防 / 加齢 / 老化 |
研究概要 |
高齢者の転倒リスク状況は個々人で大きく異なる。自立した生活を営む高齢者に対しては一般に運動による転倒関連身体機能因子の改善が主となる。しかし、身体的虚弱、運動器障害、または転倒恐怖感から閉じこもりがちな高齢者は、転倒予防の運動に対して極めて消極的である。理想的には、様々な転倒リスク因子を考慮した多因子介入を行うべきであるが多因子介入は費用、人的労力、必要となる専門家の数、日常生活への介入に対する拒否感から、十分な効果を残していない。これらの高齢者は転倒ハイリスク者で喫緊の対策が不可欠であるにもかかわらず、対策が施されず取り残された高齢者である。転倒予防介入の発想を転換し、まず生活活動範囲(外出頻度)を高めることを目的に、現状の"転びやすさ"と"どうすれば転ばないか"を簡便に(身体的負担度が小さく)、かつ具体的に理解させる必要があろう。自立度の低い高齢者は脊椎の変形性彎曲(亀背、骨盤後傾等)や下肢運動器障害を有していることが多く(運動器不安定症)、バランス能力や下肢筋力も著しく低下している。これらの特徴は、観点を換えれば、転倒の発生パターンや転倒しやすい方向(姿勢制御範囲が狭く、転倒回避動作が取りづらい方向)の特定が容易ともいえる。また、運動器不安定症は、姿勢や立位姿勢時の重心動揺、足踏み動作において特徴的傾向を呈することから、これらの総合的な分析により上記の転倒可能性の予測はもちろん、転倒回避動作の提案が可能である。本年度は、まず運動器不安定症をスクリーニングする計測装置の開発を行った。装置の設計と計測プログラムフローチャートの設計、測定変数の選択を行い、試作器を製作した。若年者を対象とした予備測定を行い、計測プロトコル、計測精度の問題点を検証し、修正した。また、運動器障害を伴う高齢者に対して、運動器障害の状況と転倒経験の有無、転倒パターンの関係を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、計測装置の試作器は完成し、若年者を対象とした予備測定を終え、高齢者を対象とした測定を開始している。24年度から本格的に運動器不安定症高齢者を対象とした計測を開始する。
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今後の研究の推進方策 |
運動器障害を有する高齢者(特定高齢者、在宅高齢者)を対象に、計測装置を利用した様々な動作(足踏み、重心移動動作)時の足圧中心動揺測定、姿勢測定を実施し、転倒リスク、疼痛度、転倒恐怖感、および身体機能水準との関係を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度は、提携している高齢者集団の各フィールドに出向き、延べ150名程度の測定を実施する。そのため、研究費は、測定関連消耗品、測定補助人件費・謝金、出張費が主となる。また、学会での資料収集、研究協力者との打ち合わせによる国内旅費、計測機器の修正費も予定している。
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