研究課題/領域番号 |
23650431
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
出村 慎一 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20155485)
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キーワード | 転倒予防 / 加齢 / 老化 |
研究概要 |
転倒ハイリスク者には、様々な転倒リスク因子を考慮した多因子介入を行うべきであるが、多因子介入は費用、人的労力、必要となる専門家の数、日常生活への介入に対する拒否感から、十分な効果を残していない。これらの高齢者には喫緊の対策が不可欠であるにもかかわらず、対策が施されず取り残された高齢者である。転倒予防介入への発想を転換し、まず生活活動範囲(外出頻度)を高めることを目的に、現状の”転びやすさ”と”どうすれば転ばないか”を簡便に(身体的負担度を小さく)、かつ具体的に理解させる必要があろう。自立度の低い高齢者は脊椎の変形性歪曲(亀背、骨盤後傾等)や下肢運動器障害(関節炎等)を有していることが多く(運動器不安定症)、姿勢や立位姿勢時の重心動揺、足踏み動作において特徴的傾向を呈することから、これらの総合的な分析により上記の転倒可能性の予測はもちろんのこと、転倒回避動作の提案が可能である。 昨年度、運動器不安定症をスクリーニングする計測装置の開発を行い、立位姿勢やその場足踏み時の足圧中心動揺計測器、および簡便に姿勢評価する分析システムを製作した。本年度は、この計測装置で計測可能な運動器不安定症に関わる要因について、転倒リスクとの関係性を検証した。まず、関節炎などによる膝関節不具合の愁訴と転倒リスク、ADL成就能力との関係を検証したところ、両足に不具合を有する者のADL成就能力は低く、転倒リスクも高くなる傾向を示唆した。膝関節不具合を有するものが、立位姿勢や足圧中心動揺に反映されるかについては分析中である。また、その場足踏みから転倒リスクを評価する試みを実施し、毎分40回の規定テンポによる足踏みは転倒ハイリスク群が劣る傾向を示唆し、運動器不安定症の評価方法として有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、前年度に試作した測定器を利用して、足踏み動作、静止立位姿勢における側圧中心動揺、姿勢、股関節可動域、下肢障害の有無との転倒リスクとの関係を検証した。これらの知見をもとに研究計画最終年度(25年度)において、計測、評価システムの完成を目指す土台が整っった。
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今後の研究の推進方策 |
試作器は、姿勢判定、足圧中心計測、足踏み測定が別々の計測システムとなっているため、それらの統合を目指すとともに、転倒ハイリスク、および発生の予測精度の検証を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度も継続して、提携している高齢者集団の各フィールドに出向き、述べ200名程度の測定を実施する。そのため、研究費は、測定関連消耗品、測定補助人件費、謝金、出張費が酒となる。また、学会での資料収集、研究協力者との打ち合わせによる国内旅費、計測機器の修正費も予定している。
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