研究課題
高齢者の転倒は様々な要因が関与して発生するため、下肢・体幹筋力、バランス能力、歩行能力などの転倒関連体力が低下した者や運動器障害を有する者だけが転倒するのではなく、活動量や活動強度、生活空間が大きいために転倒危険場面に遭遇する頻度が高くなって転倒する者もいる。転倒を予防する目的は、転倒によって骨折などの重篤な傷害が発生することで、寝たきりの原因となったり、転倒後症候群といった事態を防ぐことにある。転倒経験者のうち、転倒関連体力の低下、または運動器障害を有する運動器不安定症の高齢者の方がこれらの事態に陥りやすいが、これらの高齢者は、転倒関連体力の改善には意欲的ではなく、運動型の転倒予防教室に参加しない傾向にある。本研究では、それらの高齢者においても簡便に運動器不安定症をクリーニングでき、且つ具体的な対策をフィードバックできる計測システムの開発に取り組むことを目的とした。本年度は、昨年度に引き続き、運動器不安定症のスクリーニングする計測装置(試作器)を用いて、転倒リスク、生活空間、およびその他の身体機能との関係を検証した。本研究で開発した計測システムは、静止姿勢時、その場での前後左右への重心移動、およびその場足踏み時の足圧中心位置の変化を計測する足圧中心位置計測板と、側方からの姿勢を判別する画像撮影システムを組み合わせたものである。静止立位姿勢の撮影により亀背、骨盤後傾などの脊椎の変形性歪曲を分類できたが、必ずしも姿勢異常が転倒リスク、身体機能水準と関係していなかった。しかしながら、その場足踏みや重心移動の動揺軌跡や動揺距離、動揺の安定性が低く、姿勢異常が認められるものは転倒関連体力が低く、転倒リスクが最も高かった。以上より、静止立位姿勢とその場での簡単な動作時の足圧中心動揺を計測する本計測システムによって運動器不安定症をスクリーニング可能と考えられる。
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