研究課題
骨格筋は優れた再生能力を有しており、それを可能としているのが骨格筋幹細胞である、筋衛星細胞である。しかし、遺伝性筋疾患等では、新しくつくられた筋細胞もすぐに壊れてしまう為に、筋衛星細胞の再生能力が疲弊するのが病態進行の一つの原因と考えられている。申請者は自身が見いだしたマウス系統間の差再生能力の差異に着目し、再生能力の優れている、C57BL/6と再生能力の劣っているDBA/2系統の筋衛星細胞の遺伝子発現解析を行った。単純な筋衛星細胞同士の比較では嗅覚受容体等,筋幹細胞の活性との関連が不明な物が多く,候補遺伝子の選定が困難だったため,比較対照となる別の細胞も準備して,解析を行う事にした.最終的に、C57BL/6とDBA/2の間にSNPがあるものとして、Rpl29, 等に絞れた。また、加齢に伴う、筋量低下もC57BL/6とDBA/2の間には大きさ差異がある事がしられており、DBA/2は顕著な筋重量減少をしめす。筋ジストロフィーのモデルマウスであるmdxをDBA/2背景にした場合には、18ヶ月齢では若齢の1/5程の筋重量になった。これら筋重量低下の原因は筋衛星細胞の機能低下よるものと考えられるため、24ヶ月齢の筋衛星細胞をC57BL/6とDBA/2から準備したが、寿命自身がDBA/2の方が短いため、十分な細胞の採取にはいたっていない。今後はRpl29と長期的な筋再生の関連を明らかにするとともに、筋衛星細胞だけではなく、他の細胞も視野にいれた包括的な研究が必要である。
3: やや遅れている
計画通りにいかなかった最大の理由は、C57BL/6とDBA/2の筋衛星細胞の遺伝子発現解析の結果が、あまりにも沢山あり、そこから絞り込む事が困難であった。この点を改善するために、筋衛星細胞、筋芽細胞、間質細胞をそれぞれC57BL/6とDBA/2から用意し比較することにした。さらに、SNPのデータベースを組み合わせる事で、最も発現変化のあったRpl29を同定できたのは、大きな進捗であると期待される。さらに、C57BL/6とDBA/2の筋再生の表現型を決定しているのは、複数の細胞や複数の遺伝子あることも否定はできない。こんごこれらの「長期的な筋重量や筋再生」を調節してる機構を包括的に網羅的に行うことで、加齢による筋重量阻止に対して道が開かれると期待される。
現在、申請者は別のプロジェクトにおいて、筋衛星細胞の維持メカニズムの解明を目的に研究を進めている。そのなかで、1) Notch/Rbp-J/Hesr1/Hesr3経路が筋衛星細胞の未分化性の維持2) Calcitonin receptor経路が筋衛星細胞の未分化性以外の維持に必要である事を明らかにしつつある。これら筋衛星細胞の維持に関わる因子や経路の機能破綻が、加齢に伴う筋衛星細胞の数や能力の減少につながると考えられる。本申請で用いたDBA/2系統のマウスはC57BL/6系統のマウスに比較して、極めて長期的な再生能力や加齢に伴う筋重量の低下を呈する。これま二系統間の比較を継続することで、NotchやCalcitonin receptorの下流因子につながる可能性もある一方、これまでのアプローチでは同定が困難であった、筋衛星細胞の維持に関わる遺伝子の同定につながる可能性がある。オミックスデータをバイオインフォマティクス専門の研究者と共同で進めることで、加齢にもとなう筋重量減少を食い止める事のできる分子標的の同定を続けていく予定である。
本課題で同定したRpl29などの遺伝の機能解析を行う。具体的にはRpl29強制発現用のウイルスベクターを用いて、培養筋芽細胞の発現させ、筋芽細胞の増殖・分化に影響を与えるかについて検討を行う。強制発現系において、結果が得られた場合にはsiRNAを用いてRpl29等をノックダウンし、その表現系解析を行う。さらに、加齢マウスの筋衛星細胞の検討に関して、現在マウスを準備中であるので、加齢に伴う筋衛星細胞の変化の再現性ならびに、Rpl29などの遺伝子の発現変化についての検討を行う予定である。
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