ヒトの骨格筋において、エキセントリック運動後のサテライトセルの動態を、組織学的・分子生物学的に明らかにすることを目的 として実験を企画・実施した。 1~2年目に、効率よくエキセントリック運動とコンセントリック運動を行わせるために、踏み台昇降運動の 方法に関して、筋電図記録と動作解析を併用し予備実験を行った。その結果、40cmの踏み台を利用し、1歩1.5秒ペースで、右脚から前方に踏みあがり、右脚から後 方に降りる運動を繰り返すことにより、右外側広筋で発生する筋電図積分値はエキセントリック局面がコンセントリック局面の約4倍であることを確認した。今年度は、男女15名の被験者において上記運動を実施し、運動前、2日後、5日後に両外側広筋からニードルバイオプシーサンプルを採取した。前年度に確立した組織学的分析とリアルタイムRT-PCRによるmRNA発現量の定量を行った。その結果、左外側広筋において2および5日後にサテライトセル活性化因子であるInterleukin (IL)-6、Insulin-like growth factor (IGF)-I 、Hepatocyte growth factor (HGF)およびMyostatinなどのmRNA発現量増加が認められた。しかし、サテライトセル数の変化に顕著な左右差は認められなかった。Myostatin mRNAの発現量が5日後において増加していたことは、5日後にはすでにサテライトセルの増殖がすでにダウンレギュレートされていることを示唆しているかもしれない。
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