本研究の目的は、食後に短時間の階段昇降運動を行わせ、それによって血糖値がどの程度低下するかを明らかにすること、さらに、同運動による一定期間の介入により、食後高血糖症状がどれだけ緩和されるか、ブドウ糖負荷試験の成績、インスリン分泌量などに改善が認められるかを明らかにすることであった。 本研究では平成23年度に食後高血糖症状を呈する者、糖尿病患者、合わせて8名に対して4日/週の頻度で昼食後90分の時点で約8分間の階段昇降運動を3ヶ月間実施させ、空腹時血糖値(介入前100.9±15.4、介入後95.0±12.2mg/dl)およびHOMA-IR値(介入前1.90±1.07、介入後1.43±0.67)の有意な低下を確認した。ただし、階段昇降運動による血糖降下量および同運動介入によるインスリン感受性改善効果には個人差が認められ、各人について同運動介入にふさわしいタイミング(食後何分で運動すればいいのか)を知ることが同運動を用いた運動介入に対して重要であることを確認した。 平成24年度6月のアメリカ糖尿病学会でここまでの知見を発表し、海外の研究者から好評を得た。また、同学会において連続血糖値監視モニター(CGMS)の廉価版が発表されたことから、被験者数を増やすために行う予定であった介入研究を一旦中止し、同研究に予定していた資金で同装置を購入した。介入研究を予定していた被験者に対し同装置を用いた連続血糖監視を2回程度行い、各人の運動介入のタイミングを知るための調査を進め、これまで男女合わせて8人に対するモニタリングを終了した。
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