研究課題/領域番号 |
23650438
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福林 徹 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70114626)
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研究分担者 |
南沢 享 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40257332)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鍼通電 / 筋萎縮 / マウスモデル / 健康増進 |
研究概要 |
東洋医学を代表する鍼治療は代替療法の一つであるが,その治療メカニズムは未だに解明されていない.(骨格筋萎縮の過程では, E3 ユビキチン・リガーゼatrogin-1, MuRF1が筋萎縮を引き起す原因遺伝子であることが,分子生物学的な阻害実験により解明された.)本年度後肢懸垂型骨格筋廃用性萎縮モデルマウスを用いて介入実験を行ない,鍼通電療法ならびに置鍼法の効果の検証を行なった.ヒラメ筋の筋湿重量は後肢懸垂群と比較して,置鍼群,鍼通電療法で有意に増大した(各p<0.05, p<0.001). また,筋線維断面積においても,鍼通電は後肢懸垂群と比較して有意に増大した(p<0.05). 一方,萎縮関連遺伝子atrogin-1の発現量は,後肢懸垂モデルによって高まり,置鍼ならびに鍼通電療法によって,有意に減少した(各p<0.01, p<0.01). また,MuRF1の発現量も後肢懸垂モデルによって高まり,鍼通電療法によって有意に減少した(p<0.01).また,螺旋ワイヤー固定という不活動型骨格筋萎縮モデルを作成し,2週間の介入実験を行なった.その結果,ヒラメ筋の筋湿重量は固定群と比較して,置鍼群,鍼通電療法で有意に増大した(各p<0.01, p<0.001). また,萎縮関連遺伝子atroign-1の発現量も鍼通電群によって有意に減少するという結果を得た(p<0.05).これらの実験結果から,置鍼法ならびに鍼通電療法は骨格筋の萎縮抑制に有効であるという結果が導きだされた.これらの結果から鍼通電療法は骨格筋萎縮抑制する可能性がある事が示唆された.今後はさらに臨床に適応するような実験条件の検討,およびマイクロアレイ法などを用いて更なる萎縮関連遺伝子の探求を行なう予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来から行われている後肢懸垂型骨格筋廃用性萎縮モデルマウスを用いて介入実験に関しては,鍼通電療法ならびに置鍼法の効果の検証を行い,仮説通りの結果を得ることができた.また24年度に予定した新しいモデルとして行ったワイヤー固定という不活動型骨格筋萎縮モデルについても,その固定肢位を工夫した結果,2週間ではあるが予期した結果を得ることができ,海外雑誌に原著論文として投稿することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は対象動物を老年マウスとして、廃用性萎縮に対する鍼通電療法が老年マウスにも有効か否かを検証する.23年度は若年(8-9週齢)マウスを用いたが、今年は鍼通電療法が高齢化したマウスにどの程度の有効性を持つかを検証する. またこの実験では、より臨床現場における患者の状態に近づけるため、鍼通電を行う直前に、1週間の後肢懸垂を行う予定である. 年齢および、モデルの作成に要する時間以外は昨年と同じ条件を採用する予定である. また昨年完成したワイヤー固定モデルをさらに長期間行い,その有用生と従来から施行されている後肢懸垂型モデルとの差異を明らかにする.骨格筋を構成する構造タンパク質の合成並びに分解の経路の定量化を試みた.また本年度は昨年までの解析手法に加えマイクロアレイ法を追加し更なる遺伝子の探求を行なう予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には昨年度同様な配分を行い,新しい器械部品等の購入は行わない.昨年同様試薬等の消耗品がその大半を占めるが,今年は昨年以上に成果発表に力を入れ,学会参加旅費や英文原稿の校正費を昨年以上に盛り込みたい.
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