研究課題/領域番号 |
23650442
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 佐由理 筑波大学, 体育系, 准教授 (10334054)
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キーワード | 育児不安 / 子育て支援 / パートナーシップ / 自己イメージ変容 / SAT法 / 集団介入 / 妊娠期 |
研究概要 |
他者報酬追求型の恐怖に基づいた生き方と希薄なパートナーシップは、ストレス代償行動としての不適切な養育態度を生み、児童虐待を引き起こすと考えられる。そこで本研究では、妊娠期の夫婦の生き方を他者報酬から自己報酬追求型に変容し、良好なパートナーシップを形成する新たな両親学級を提案することが狙いである。今年度は、第1段階として、子育て期や妊娠期の夫婦の気質と心理社会的要因の関連を質問紙調査により把握し、第2段階として、独自の集団介入法により介入し効果を検討することが目的であった。 第1段階の調査の結果(公立幼稚園児・保育園児をもつ母親n=494、有効回答率44.9%)、妊娠期を振り返った時に相談相手がいたと認知している者はそうでない者に比べ、育児中の現在、有意に自己抑制が弱く、育児不安感や抑うつが低かった。また、妊娠中に情緒不安定であったと認知している者はそうでない者に比べ、有意に自己価値感が低く、育児不安感やマルトリートメント傾向が高かった。自分に自信がなく他者を気にして行動する他者報酬の生き方や希薄な関係性は不安や抑うつ、不適切な養育態度を生むと推察される。 そこで第2段階として、夫婦や家族の生き方変容や関係性構築を促す支援法による介入を乳幼児をもつ母親(p=11)に2時間計4回行った。その結果、介入直後、有意に育児不安感が弱くなっていた。一ヵ月半後には、育児自信感が高まり、有意に育児不安感や特性不安やマルトリートメント傾向も低下していた。また、講座を終えて、妊娠期に本講座の開催を希望するか否かを問うと、11名中9名が希望すると答えた。介入により、家族がお互いをどう尊重すべきかや、自分の良さを生かし、どうセルフケアすべきかが理解されたことで、育児への自信が高まり、不安の軽減、養育態度の改善が見られたと考える。乳幼児をもつ親への支援法の有効性が示されたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、増加の一途をたどる児童虐待に焦点をあて、新たな支援法を開発することを狙いとしている。 初年度は、東日本大震災の直後となり、その影響から介入計画を立てることが難しく、研究の進行がやや遅れていた。しかし、24年度は、第1段階として、子育て期の夫婦の気質と心理社会的要因の関連を質問紙調査により把握し、その結果を踏まえ、夫婦の生き方を他者報酬追求型から自己報酬追求型に変容させ、良好なパートナーシップを形成する新たな介入法を提案すること、および、第2段階としての、新たな介入法による集団介入をし、介入前後およびフォローアップ調査により本介入法の効果を検討することを実施することができた。子育て期の母親に対する介入は、第2子、第3子を産む前の母親も含んでおり、妊娠期あるいは妊娠前の夫婦への介入の貴重な資料となった。 震災での遅れは、ほぼ取り戻したが、調査や介入協力者への個別フィードバックは、24年度中に終わらなかったため、25年度にも引き続き行う。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、第3段階として、普及のために支援者の養成と養成した支援者による介入を試み、効果を検討することを目標としている。 25年度は、24年度の調査対象に対して、前向き調査を行うことで、さらに因果関係を明らかにしていく。そして、養成した支援者により、妊娠期や妊娠前の夫婦、あるいは、子育て期の夫婦に対しての介入をその効果の検証を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は調査研究、ならびに、支援者の育成、介入研究を行う。 物品費 150,000円(調査票印刷代、ファイル、教材印刷費、インク代、メモリースティックなど)、旅費 200,000円(学会参加の交通費、介入実施や調査依頼時の交通費など)、人件費・謝金 600,000円(非常勤研究員の雇用、データ処理などの事務補佐員の雇用など)、その他 160,000円(学会参加および発表、論文投稿料、切手代、宅配便代など)、以上に研究費を使用する計画である。 24年度中に、調査や介入協力者への個別フィードバックを終えることができなかったため、フィードバックを作成し郵送するための、人件費や送料、封筒代、印刷費などを25年度に持ち越した。
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