研究課題
本研究は「働き方の多様化」を支え、ワークライフバランスの実践を促すための雇用システムおよび人事評価制度について考察するものである。今日の雇用環境下で人事評価制度の妥当性が揺らいでいることを示した昨年度の成果を受け、本年度は、人事制度をインセンティブシステムとして有効に機能させるための手続きについて検討を行った。人事評価制度の内容と経営環境との整合性に注目しながら、インセンティブシステムとしての妥当性について考察を試みた。その結果として、仕事の質 (内容、価値、責任の重さ、キャリア形成の過程等)の多様化という現実を評価システムに反映させることが重要な課題であり、従業員の仕事の幅と自由度を測定し一人一人の職務を正しく評価して職務設計をすることが、働き方の多様化を促す上で不可欠なことを明らかにした。また次の3点についても主張した。(1)職務の内容、価値およびその遂行における責任という観点からは、正規・非正規という雇用区分はあくまで表面的なものである。今日のように雇用形態が多様化した結果として基幹業務を担う非正規社員が増加したり、正社員間でも職務の中身が多様化したりすると、職務ベースの評価方法を取り入れることが必要な場面も出てくる。(2)企業特殊技能は技術進歩が急速な環境下で強みが発揮されたものであり、長期雇用や年功賃金といった仕組みは、基幹業務を担う正社員に対し企業特殊技能(職域に捉われない技能形成)の向上を促すインセンティブシステムとして機能したが、運用の見直しが求められている。(3)企業特殊技能の育成を重んじた風潮の下で勤務時間を評価の尺度として用いることは不可避かもしれないが、仕事の質が多様化する今日、その尺度は合理的とは言い難い場面もある。長時間労働の問題については、人事評価システムの観点からも熟考される必要がありワークライフバランスの実現に大きな障壁ともなる。
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2013 NBES Annual Conference Official Proceedings (Electronic Proceedings, ISSN: 2151-3333)
巻: 2013 ページ: 1-25