研究概要 |
ヒマラヤ地方から日本までの照葉樹林文化圏の中心地である雲南の食・染織文化の特性と日本との関連性を明らかにする事を目的とし、共通性の中から新しい健康食品を見出すための薬用、食用植物に関する調査、および天然ラック染料の利用の現状と、生活環境の影響を受ける伝統刺繍のモチーフや技術について調査・研究を行った。 「薬草、野菜分野」昨年度の春季入手の13サンプルは、ヒユ、トケイソウ、ツツジ科、を除き日本でも常用されるドクダミ、オトギリソウ、サトイモ、キク、ウコギ、リンドウ、クスノキ、サクラソウ、ヤマゴボウ、バラ、シソ科であった。これらの示す抗酸化活性の性格や原因を絞るためポリフェノール含量やLDL抗酸化能について検討し、有効サンプルをしぼった.10月末から11月初めにLincang, Wenshanの市場を訪問し、過去二回の収集サンプル間で有効性の高かったサンプル(蘚類および顕花植物数種)を入手した。現在抗酸化活性の再現性を確認試験中であり、今後は活性物質の単離精製を予定している。 「被服分野」昨年度の調査で、ラック色素(ラッカイン酸)は雲南省において手工業・工業的には利用されていないことが判明した。しかし、ラックの色が起源と考えられる赤が際立つ少数民族衣装の調査を行う中で刺繍や縫製は着用者やその家族が行うことも多いと判明した。パーツ売りの民族衣装の商店でパーツを入手することもあるが、女性が日常的に着用するものとして民族衣装の需要がいまだあることが今年度の調査で確認された。今後は、イ族を中心に、またイ族との対比も視野にいれ、ミャオ族、ハニ族、チワン族をふくめ、日本のルーツとされる照葉樹林文化圏の中心である雲南省における民族衣装の伝統的材料(染料、繊維)や装飾技術とモチーフの、照葉樹林文化圏東西5000KMにおける共通性と非共通性を解明するための基礎調査を続ける予定である。
|