最終年度においては、衣服設計システム(アパレルCAD)のトレーニングマニュアルを改善した。特に高齢者にとって分かりにくかった点を詳細にした。続いて、実際に高齢者用の衣服を作成した。作成方式として平面作図方式(アパレルCAD)と立体を平面に展開する方式(3次元平面展開CAD)の2方式を比較検討した。その結果、立体を平面展開する方式が優れていることが分かった。しかし、このソフトウエアは平面作成方式の10倍の価格であり、しかも高齢者にとって学習しにくいものであった。安価な平面作図方式で、どこまで品質を高めることができるかが次の課題となった。 研究期間全体を通じて、(1)コンピュータ技術を駆使したプロ仕様のアパレルCADを高齢者は使いこなせるか?。(2)高齢者用衣服(高齢者の体型を考慮した衣服)は、現状のアパレルCADで質の高い設計ができるか?。という問題意識があった。(1)に関しては、習得には若者と比較して時間がかかるが、トレーニングマニュアルを工夫すれば十分使いこなせることが分かった。被験者の中には実際にCADを購入して使用し続けている者がいる。(2)に関しては、若者の体型とは異なるため、既存のアパレルCADでは質の高い設計は困難であった。しかし、より高級な(高価な)設計システムでは質の高い設計が可能であった。この点は今後の課題である。 これらの研究成果によって、今後の少子高齢化社会を「高齢者による高齢者のための衣服設計技術」により、楽しく明るい社会に変化させることは、十分可能であるということを示唆できた。 なお、本研究内容は、研究協力者である宮崎奈津紀の奈良女子大学大学院人間文化研究科平成25年度修士論文「フィット性評価を用いた高齢者用衣服作成法に関する研究」に詳細が記載されている。
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