直接身体に触れる寝具は寝心地や快適性をはじめとして睡眠に大きな影響を与えていると考えられるが、睡眠時の生理心理反応については殆ど検討されていない。本研究では、硬さと弾性の異なるマットレスを用い、「寝転び心地」「寝心地」について短時間臥位実験 、終夜睡眠実験、日常連続睡眠実験により、寝姿勢、体圧分布、睡眠解析、生理・心理反応について検討した。 <方法>実験1:「寝転び心地」実験として、青年女子20名で4種類の硬さと弾性の異なるマットレスに短時間仰臥位および側臥位でSD法を用いた評価実験。実験2:「寝心地」終夜実験として、健康な若齢者男女15名を被験者とし、人工気候室内にて8時間の終夜睡眠実験。実験3:「寝心地」終夜実験として青年女子9名で普段の睡眠環境における硬さの異なるベッドマットレスをもちいた連続使用による終夜睡眠実験を実施した。最終年度はこれらの実験の関連と、睡眠深度への影響や心理的影響について検討した。 <結果>実験1「寝ころびごこち」評価:体圧が分散している、柔らかいマットレスであるソフト、低弾性のマットレスが快適で寝心地がよいと評価しているが、低弾性では寝返りがしにくいとも評価した。また側臥の方がより快適評価が高く、低弾性では、底付き感があった。実験2「寝心地」終夜実験:ほぼ同様の体圧分布であったが、脳波的睡眠深度には差が認められなかった。実験3連続終夜実験:低弾性で仰臥位の出現率が低いが体動回数は多く、最大静止持続時間は硬いマットレスでやや長かった。これは、低弾性では側臥位でも姿勢が安定し比較的姿勢を保持できるが、体動時は動き難いためと考えられる。寝床内湿度は低弾性がやや高めだったが、睡眠深度には差が認められなかった。これら4種のマットレス程度の差では、「寝転び心地」には差があるが、その寝具での睡眠深度には有意差がなく「寝心地」にそれほどの差がないと考える。
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