研究課題/領域番号 |
23650458
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
中山 徹 奈良女子大学, 人間文化研究科, 教授 (60222171)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 商店街 / 中心市街地活性化 / 衰退要因 / まちづくり |
研究概要 |
国内で「元気な商店街77選」に選ばれた商店街(その当時は繁栄していると判断された商店街)のなかで、近年、商店数の減少が著しい商店街を選定し、なぜ、商店街が衰退に向かったのか、その原因を検討した。調査は、選定した商店街を訪問し、商店街関係者、行政の商工担当者、商工会議所、町内会役員などを訪問し、インタビュー調査で進めた。調査の途中であり、確定的なことはまだわからないが、この調査で明らかになった要因は下記の通りである。(1)商店街の外的要因:商店街内、商店街近接部にあった大型店が撤退し、商店街の来客数が減少した。郊外に大型店が立地し、顧客が郊外に流れた。商店街の立地する地域で人口が減少し、消費が落ち込んだ。(2)商店街の内的要因(ハード面):商店街内で道路の拡幅事業が進み、回遊性が失われた。資金面の制約から維持管理費などが支出できず、老朽化が進んだ。生鮮食料品などの店舗が撤退し、店舗構成に偏りが生じた。(3)商店街の内的要因(ソフト面):後継者が少なく、長期的な視点での議論ができない。高齢者が商店街の役員をしめ、若手の意見が反映できない。個店の経営は考えるが商店街全体のことを考える余裕がない。対面販売などを重視したが、消費者がそのようなサービスを必ずしも望んでいない。共働きが増え商店街の営業時間と消費行動が一致しなくなった。商店街の財源が減少しイベントなどに取り組めなくなった。商店街以外には中心市街地活性化の状況も一定検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象として商店街とまちづくり条例を設定した。そのうち商店街については順調に調査が進み、当初、予定していたヒヤリング調査などもほぼ終了し、仮説のフレームワークができつつある。次年度も引き続き、調査を進めることで、当初の予定はおおむね達成できると思われる。まちづくり条例については、調査対象地の選定を進めている。一定の基準に基づき、選定が進めば順次、調査にかかる予定である。商店街に比べるとやや現地調査が遅れているが、まちづくり条例の方は、商店街よりも訪問調査先を少なくする予定であり、全体のスケジュールで見た場合、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
失敗事例の調査対象は商店街とまちづくり条例である。商店街の方が先行して進んでおり、そこで失敗事例調査の方法がある程度つかめてきたため、商店街の方を優先的に進める。昨年度に訪問した商店街を含め、さらに訪問する商店街を数カ所程度追加し、昨年得たデータを補強する。その上で、失敗に至ったと思われる要因を整理する。その一方で、成功事例として書籍、論文で紹介されている商店街活性化事業と、成功要因を整理する。また、成功したとされた商店街を複数箇所訪問し、その整理で妥当かどうかを検証する。その両者が終わった段階で、失敗事例から導かれた要因と、先行事例から導かれた要因を比較検討し、成功要因の裏返しが失敗要因になっているのか、もしくは成功要因からは導けない失敗独自の要因が存在するのかどうかを検討する。まちづくり条例については昨年のリストアップをさらに検討し、調査対象事例を絞り込む。10箇所程度に絞り込めれば、電話、メール等による事前調査を行う。その事前調査結果を踏まえ、数カ所の対象地を選定し、訪問ヒヤリング調査を実施する。ヒヤリング内容は、商店街とほぼ同様とし、まちづくり条例がうまく進まなかった要因を分析する。ヒヤリング対象は当事者、行政、町内会関係者、関係していたコンサルタントなどとする。その一方でまちづくり条例の成功事例として紹介されている地域を書籍、論文等から検索し、成功要因を読み取る。その過程で必要に応じて、電話調査、メールによるデータ収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)商店街関係の訪問ヒヤリング調査(国内旅費) 調査予定地8ヶ所(東京、名古屋、福岡周辺を予定)(2)学会発表:日本建築学会大会、日本地域経済学会大会を予定(3)調査補助:資料印刷、データ入力補助者(4)専門的知識の提供:商店街活性化に関する専門的知識について(5)その他:調査票の印刷、文具などの消耗品
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