【目的】 本研究の当初の目的は,個人住宅に対してモデル的に「縁側」を設置することで地域(人)とのつながりを促進させることとなり、ひいては健康的な在宅生活を持続させることに結びつく可能性を検証することでした。つまり,縁側の設置は地域住民に対するご近所意識の向上につながることが予測され,居住する本人の社会的交流の拡大にもつながるものと考えました.具体的には,①健康の3要素である身体・精神・社会を住環境の側面からその機能を維持,改善させることが可能であること,②現代家屋では玄関の上がり框の高さが低くなっている状況から高齢者には好ましくないことが予想され,このことは高齢者の外出動作(社会機能)を阻害するとも考えられます.この点から,地面からの高さが約400mmである縁側は腰を掛けての靴脱着が可能であり,外出動作を容易にする機能もあり,縁側は外出という社会機能を促進させる機能を有すること,③縁側が持続的な在宅生活に寄与できることが証明されることで,介護保険制度による住宅改修項目に「縁側の設置」を新たに付け加えることを提案すること,でした. 【結果】 1 平成23年度~平成25年度の3年間で,当初予定していた5件の縁側を試行的に設置することができました.設置後約3~4ヶ月ごとに訪問面接による聞き取り調査(計23回)を実施した結果,①縁側を介した外部空間との出入り行動が増える,②外部からの訪問が容易になる,③縁側における活動としては,訪問客への接客,洗濯物干し,読書等が増える,④居住者のADL(Activities of Daily Livings=日常生活活動)には変化を及ぼさない,ということが推察されました. 2 また,本研究に関連して実施した事前調査対象者に対する2年間の居住継続意識調査では,高齢者と中年者での違いが明らかとなりました. 3 本研究に関する「研究成果報告書」を発刊しました.
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