本実験では,特にわが国で人気がある食用キノコ、ナメコについて,その分泌抽出物(粘性ゲル状食品)およびナメコ子実体(固形状一般食品)由来多糖の免疫調節作用について,リンパ球およびマクロファージに対する活性化および分化への影響,つまり免疫調節作用を重点的に調べた。ヘルパーT細胞におけるTh1/Th2バランスに対する食用キノコの影響は,これまでも多くの報告がある。本実験でもナメコ試料が,生体に対してTh1優位に影響することが示唆された。 マクロファージは単球から分化するが,様々な分化型を示し,自然免疫系で重要な役割を果たすことが,最近明らかになりつつある。そこで本実験では,ヒト単球THP-1細胞株を用いて,これらマクロファージの分化に対する,上記ナメコ試料の影響を調査した。それらの結果,ナメコ試料はその形状に関わらず,炎症性サイトカインであるIL-1βやTNF-αなどの産生を誘導した。つまり両試料とも,炎症型と呼ばれる古典的活性型のマクロファージ(M1)への分化誘導能を示した。これらのことにより,機能性多糖を取り巻く環境(食品の形態)が異なっていても,その作用自体は変化しないということが示唆された。このことは,これら機能性多糖を素材として様々な加工食品が開発できる可能性を示した有用な結果であると考える。しかしながら、咀嚼・嚥下困難者用食品として開発するためには,添加量の調節や,どれくらいの期間食べ続ける必要があるのかなどを,明らかにして,いかに「食べやすい」食品にするかさらに検討する必要がある。 本実験ではさらに,他の食用キノコ「タモギタケ」の抽出多糖画分のマクロファージ分化における免疫調節作用も検討した。その結果,ナメコ同様にM1優位の分化を誘導した。これらのことより,キノコ中多糖は総じて炎症性免疫反応を誘導することが示唆された。
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