研究概要 |
大腸癌は本邦のがん死亡者数の第3位であり、2015年には患者数がさらに増加すると予測されている臨床上、きわめて重要な疾患である。そのため、大腸癌予防法の確立に対する医学的・社会的要請は非常に強く、研究の重要性については論を俟たない。本研究では、新規大腸癌抑制遺伝子(SLC5A8)を標的として、食品機能成分によるSLC5A8の発現誘導を基盤とした全く新しい大腸癌予防戦略の可能性を提示することを目的とする。具体的到達目標は、食品機能成分によるSLC5A8の機能制御が可能であることを実証し、食品機能成分によるSLC5A8制御に基づく大腸癌予防戦略の提唱を図ることとした。腫瘍組織におけるSLC5A8の発現低下にはDNAメチル化が関与しており、脱メチル化によってその発現が回復する。また、SLC5A8強制発現細胞系では、DNA脱メチル化処理によりSLC5A8の発現が上昇する(Thangaraju, Itagaki, et al., Cancer, 2009)。この知見に基づき、本年度は食品機能成分のSLC5A8活性化効果の評価に用いるヒト大腸癌由来培養細胞の決定に取り組んだものの、現在のところDNA脱メチル化剤の曝露によりSLC5A8の発現が上昇する細胞は見いだせていない。強制発現細胞系と培養細胞系の遺伝子発現活性の差異がその原因である可能性が考えられた。SLC5A8の輸送体としての特性については十分な情報が得られていることから、今後は、DNA脱メチル化剤の暴露条件、培養液中の微量元素濃度等に焦点を当て、ヒト大腸癌由来培養細胞においてもSLC5A8の発現上昇を得られる条件について検討していく。
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