本研究の目的は、エネルギー消費量評価のゴールドスタンダードである二重標識水法を用い、測定が非常に困難な乳幼児を対象にエネルギー消費量を縦断的に実測し、乳幼児期におけるエネルギー消費量の発達的変化を明らかにすることである。さらに、3次元加速度を同時測定し、高額な二重標識水法によらずに、簡便かつ精度良く乳幼児の日常生活における身体活動量を推定する方法についても検討を行う。 前年度に引き続き、平成25年度も附属幼稚園において、夏期(7月)と冬期(2月)に二重標識水法による測定を実施し、更に園児14名の実測データを蓄積することができた。両年にわたり実測することができた男児5名、女児2名について、夏期の日常生活における身体活動量の発達的変化について分析したところ、休日の合成加速度の平均値に有意差は見られなかったが、男児において、平日の幼稚園内での生活時間における合成加速度の平均値は有意に減少していた。発達段階が進むにつれて、園内の集団活動等において静的活動が増え、身体活動量が低下することが推察された。 また、乳幼児の安静時代謝量の縦断的実測も継続して実施し、早朝起床後にフード法により仰臥安静状態のエネルギー消費量を実測した。約2年間3ヶ月おきに実測した男児2名のデータを解析した結果、体重あたりの安静時代謝量は、発達段階が進むにつれて減少することが確認された。また実測値は、日本人の食事摂取基準(2010)に示されている基礎代謝基準値に比べてやや高い傾向が観察された。フード法は従来のマスク法に比べて被験者にとって圧迫感や負担感が少なく、特に乳幼児の測定に適した方法である一方、フード内で安静状態を継続させるためには事前に測定環境に慣れさせる等の手続きが必要であることが示唆された。本研究成果の一部は、平成25年9月にスペインで開催された国際栄養学会において発表した。
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