昨年度の研究は、腸内フローラの解析から個々人の健康状態を評価する技術として、1.善玉菌と悪玉菌の比率から腸年齢を推定する方法、2.バクテロイデス門とファーミキュート門の比率から肥満状態を評価する方法など、主として分析系の確立と分析条件の最適化に主眼を置いた。本年度は、3.糞便からDNAを短時間かつ高純度に抽出・精製する技術を新たに開発し、本研究で実施される特定の腸内細菌フローラを対象とする定量が、糞便内の腸内細菌量を正しく反映しているかどうかを検証した。すなわち、定量性の評価にあたっては、人工遺伝子を用いる添加実験、細菌培養定量実験やリアルタイムPCR定量実験との比較検討を行い、本法で開発した特殊プライマーを用いる競合的マルチプレックスPCR定量法の優れていることが実験的にも証明された。4.新生児から高齢者に至る健康ボランティアから提供された糞便試料を分析し、善玉菌と悪玉菌の比率から腸管健康度を定義するとともに、腸管健康度と年齢との関連性について検討した。5.痩せから肥満傾向にある大学生から提供された糞便試料を分析し、バクテロイデス門とファーミキュート門の比率から腸管肥満度を定義し、BMIと体脂肪率との関連性について検討した。6.プロバイオティックスを評価する指標として、4種の乳酸菌(カゼイ菌、ブルガリクス菌、サリバリス菌、ブレビス菌)の腸管内の消長を分析する方法を新たに開発し、経口投与された乳酸菌の腸管内安定性などを検討した。 以上2年間の研究で、当初に予定された腸内フローラを指標として腸管の健康状態を評価するシステムは概ね確立できたといえる。今後は、応用例、実施例をさらに増やし、本法の分析精度を向上させるとともに、分析対象、健康評価基準を拡大、深化させ、より実践的な食生活管理システムの実現へと発展させたいと願っている。
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