研究課題
食文化は、アジア各民族・各地域において固有のものであるが、他の文化的要素と同様に、「文化変容」が進みつつある。大きな原因であるグローバリゼーションは、食材・調理法を、国際的に普及した(主に先進国の)文化のものに、置き換えてしまう。ただし、この過程ではローカリゼーションもあり、先進国の文化が各地の風土に合わせて変わることや、逆に先進国が各地の文化を、その流通経済に合わせて変えつつも、受け入れてきた。それに伴う、環境問題や健康問題を研究する対象地として、タイとインドネシアに着目し、これらの国出身で国際都市・東京に居住する人々も含めた、調査を行うこととした。タイでは東北部を中心とする各地と首都バンコクで短期訪問調査を行い、次年度以降に本格調査を行う体制を整えた。インドネシアでは東部において調査を行う協力体制を得た。また、文献資料の収集も進めた。タイ・コンケン大学の協力も得て、各国・地域で統一して用いるための、(1)世帯調査票、(2)食生活聞き取り調査票(24時間思い出し法)、(3)レシピ調査票(直接秤量法)の3つの様式を作成した。タイにおいては、各地方では、食材・調理法ともに固有の食習慣がみられたが、都市部ではファーストフードなど外食への依存が高いことがみられた。特に首都バンコクで顕著であり、中華系など他のアジア食文化も広まっていた。東京においては、タイ食材の流通があることを確認した。しかし、福島第一原発事故以降、食生活に変化があることも予想され、次年度以降に本格調査することとした。
2: おおむね順調に進展している
現地機関との交渉が、予定通り進んだ。また、タイ、インドネシアの現地状況について、現地訪問と文献調査により、理解が進んだ。調査に用いる調査票が、予定よりも早く完成した。当初は東京での調査を予定していたが、東日本大震災および福島第一原発事故等の影響により、東京在住者の食生活とライフスタイルが通常ではなく、帰国したアジア出身者もいた。そのため、状況が落ち着くまで、東京調査を延期することとなった。また、主要な調査地であるタイにおいても、大規模かつ長期的な洪水が発生したため、準備および調査に配慮が必要になった。しかしながら、逆に現地状況の把握と、現地調査の準備を今年度進めたため、全体としてはおおむね順調な進捗を得た。
平成24年度に、タイとインドネシアにおいて、都市部と村落部の調査を行う。タイにおいては、東北部では都市コンケンと、開発状況の異なる村落において、フィールドワークに基づく詳細な食事調査、健康調査、環境調査を行う。この東北部に加えて、北部、中部、南部および首都バンコクにおいて、聞き取りを中心とする調査を行い、地方の固有性や、グローバル化の影響を明らかにするための、比較を行う。インドネシアにおいては、東部の都市部と村落部において、詳細な調査を行う一方、その出身者が居住する他島で聞き取り調査を行う。平成25年度には、これらの民族出身者で東京近郊に在住する人を対象とした、詳細な調査を行っていく。それらの結果をまとめて、統計学やGISで解析を行い、グローバル化と伝統的な食文化の関係、その健康や環境への影響を明らかにしていく。
タイ、インドネシアで調査を行う際に旅費として使用する。また、それに必要な消耗品類を購入する。健康調査においては、必要な試薬等を購入する。成果を学会発表する国内旅費にも用いる。
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Anthropological Science
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People and Culture in Oceania
巻: 27 ページ: 1-17