研究概要 |
生活習慣病は,現代社会における深刻な病であり,予備群を含めると4 人に1 人が該当すると言われている.生活習慣病は,特に食生活の改善が重要である.しかし, 健康診断などで医師に食生活を見直すよう促されても病に関する危機感が薄いことから,日々の多忙な生活の中で継続的に改善に取り組むことは困難である.この問題を解決するためには,日常生活の中で誰もが手軽に,かつ継続的に食生活を見直すことで,生活習慣病を改善できるユビキタスシステムを開発する必要がある. 本研究は, 人工知能技術を利用することで, 利用者の主体性を促し生活習慣病の改善・治癒へと導くための献立メニューを作成・提示するシステムを開発する.平成23年度は, 基礎調査と調査に基づくデータ作成を実施した. 本研究では生活習慣病として, 肥満症, 糖尿病, 動脈硬化症, 高血圧症を扱う. 先ず, 山梨英和大学臨床栄養学, 及び山梨大学保険管理センターの助言の基, 以下で示す5項目の調査を行った.(a) 健康診断データから血糖値,血圧値など生活習慣病予備軍判定に必要な検査項目を明らかにした.(b) CRF で用いる素性の設計を行った.(c) 改善に必要な食品の条件を詳細化した. (d) メニューの候補を列挙したラティス構造の作成を行った.(e) ノード(メニュー) 同士の連接性を定義した. また, CRF(Conditional Random Fields)を実装し, 時系列に沿ったメニュー系列が出力できることの確認を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は, サーバマシンへの実装を行う. 実装は, 前処理とCRF で構成される. 前処理では, 課題1 で求めたデータから制約条件を出力する. CRFは制約条件を入力とし, 複数から成る系列ラベリング(メニュー系列) を出力する. さらにシステムの拡張を実施する. 拡張では, 前年度, 試作で実装したCRF を基に,利用者のフィードバックに応じて最適な系列ラベリングを動的に出力させるため,入力データの変更に対して再計算することができるようシステムの拡張を行う.さらに機械処理を行うことで, 初年度作成した献立メニュー数の拡充を行う. 具体的には, 初年度用いたデータ, すなわち, 食材, 調理方法, 各栄養素があらかじめ自明であるメニューを学習データとし機械学習を用いることで判別関数を作成し, メニュー, 食材, 調理方法を入力とするテストデータを用いて,その栄養素を出力することで, 栄養素が付与された献立メニュー数を増やす.また, 試験ネットワークシステムの構築と評価を実施する.具体的にはユビキタス送受信ユニットとしてNoteOPCから送られたデータを受け取り,サーバで計算,結果を利用者に送信・提示するプロトタイプシステムを構築する.小規模からなる健康診断実データを用い, 研究補助者の協力を得, システムの検証と評価を実施する.評価結果に基づき,知識(検査項目と栄養素,及び献立メニュー)の追加修正,CRF と再計算のアルゴリズムの改良を実施する.
|