われわれが開発した6種類のビタミンB6化合物と貯蔵型ビタミンB6の全てを超高感度で定量できる分析法(新酵素-HPLC法あるいは4-ピリドキソラクトン転換HPLC法と称す)で,食品中のこれらの含有量を解析した.初めに分析試料の処理法を確立した.そしてまず,代表的な動物性食品と植物性食品数種を分析した.卵の黄身のピリドキサール5’-リン酸(PLP)を除いて,全ての食品中のB6化合物は良好な回収率で分析できた.食品中のB6の総含有量とB6化合物の相対含有量は食品ごとに大きく異なることがわかった.貯蔵型B6はニンジン,ニンニクといった植物性食品に少量含まれていた.鶏レバーには糖尿病合併症を予防する可能性のあるB6化合物,ピリドキサミン(PM)とピリドキサミン5’-リン酸(PMP)が多く含まれていた.ついで,寿司ネタとして用いられる各種刺身(魚肉等)中の含有量を分析した.カツオのたたきやマグロ等の海産の脂肪分の多いネタ中にB6が多く含まれていた.また,糖尿病合併症の予防と治療に有効であるとされるPMとPMPがこれらのネタ中に多く含まれていた.現在用いられている食品成分表の分析値に比べて,約2倍量のB6が含まれていることがわかった.次いで,大豆発酵食品中のB6含有量を分析した.味噌では,豆味噌である八丁味噌中のB6総含有量が最も高く,西京味噌の含有量と比べて約10倍高いことがわかった.濃口醤油は八丁味噌の70%程度のB6を含んでいた.さらに,乳児にとっての食品にあたる日本人母乳中の含有量を分析した.母乳中に最も多く含まれているB6化合物はピリドキサール(PL)であった.従来,日本人母乳中にはPLPが多く含まれるとされていたが,そうではなかった. B6の総含有量,その他のB6化合物の相対含有量について日本人母乳と米国人母乳とは類似した値となった.
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