研究課題/領域番号 |
23650484
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森 亮一 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30509310)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | カロリー制限 / 分泌型 miRNA / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
個体における代謝機構は、栄養状態及び加齢に応じて、エネルギー代謝に関わる個々の臓器が協調的に対応し、個体の恒常性を維持している。よって臓器間の代謝ネットワークの破綻は、個体レベルでのエネルギー代謝システムの崩壊をきたし、その結果、生活習慣病・老年病・がんの発症及びリスク上昇を導くと考えられる。逆にカロリー制限のように、個体としてのエネルギー消費のバランスが保たれた状態では、細胞、臓器にかかるストレスが軽減されて、結果的に病態発症予防・長寿効果に繋がることが知られているが、その分子基盤は明らかではない。 microRNA(miRNA)は、細胞核内において既存遺伝子と同様に転写され、核外に移行する。その後、細胞質内で様々な修飾を受けて最終的に Ago2 (Argonaute2) 蛋白質と複合体を形成して標的 mRNA に作用し、翻訳阻害を導いて蛋白質発現制御に関与する。近年、血液中において分泌型 miRNAの存在が認められ、新たな miRNA の機能及び新規バイオマーカーとしての有用性が考えられるようになった。つまり分泌型 miRNA は、脂肪蓄積やエネルギー代謝機構にも重要な役割を担うと推察されるが、生物学的意義は未だ不明である。 そこで平成23年度本研究課題では、代謝関連分泌型 miRNA 同定を目的とし、次世代シークエンシングを用いて、マウス血漿中に存在する Ago2 結合分泌型 miRNA の網羅的同定を行った。その結果、マウス血漿中には少なくとも 300 種類以上の分泌型 miRNA が存在することが明らかとなった。また、多数の分泌型 miRNA 群は、肥満及びカロリー制限下において、顕著に発現量が変化していた。平成24年度は、in vivo 及び in vitro における Ago2 結合分泌型 miRNA の分泌メカニズム及び病態への関与解明を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の達成目標として、(1)モデル動物の作成、(2)定量 PCR 法を用いた代謝・老化関連分泌型 miRNA 群の同定、(3)バイオインフォマティクスによる新規 miRNA 候補の同定を掲げていた。(1)及び(3)については順調に行われた。(2)については、血液を採取している段階で、今後興味ある分泌型 miRNA の発現定量を行い、代謝及び老化との関連性を見出す予定である。従って、上記理由により「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度研究計画を確実に遂行するため、下記研究を考えている。具体的には、分子細胞生物学的手法及び生細胞ライブイメージングを用いた Ago2 結合分泌型 miRNA の分泌素過程の解明である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究関連消耗品購入費、学会発表を含めた情報収集費に使用する予定である。
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