平成23年度は、次世代シークエンシング解析を用いて、マウス血漿中には少なくとも 300 種類以上のAgo2 結合血液循環型 miRNA(Ago2-miRNA)が存在することを明らかにした。また、多数の Ago2-miRNA 群は、肥満及びカロリー制限下において、顕著に発現量が変化していた。そこで平成24年度は、in vitro における Ago2-miRNA の分泌メカニズム解明を試みた。まず、緑色蛍光物質結合型 Ago2(EmGFP-Ago2)ベクターを作成し、マウス肝癌細胞株Hepa1-6 に遺伝子導入を行い、蛍光顕微鏡にて観察を行った。その結果、細胞質内に顆粒状の EmGFP-Ago2 蛋白質が認められた。 次に、全反射蛍光顕微鏡(TIRF)を用いた生細胞ライブイメージング解析を行った。TIRF は、試料側の厚さ数百ナノメートルのみを照明し(エバネッセント場の形成)、この厚みの範囲でのみ励起された蛍光試料を観察する手法である。EmGFP-Ago2 発現 Hepa1-6 細胞株を低グルコース状態にて培養を行い、TIRF イメージング解析を行った。その結果、多数の蛍光顆粒が認められた。さらに、低グルコース状態下における EmGFP-Ago2 発現 Hepa1-6 細胞では、コントロールに比べ、顆粒数が変化した。以上の結果より、Ago2 蛋白質は分泌されている可能性が示唆された。 以上、平成24年度は、in vitro において Ago2 分泌機構の可視化解析に取り組んだ。今後は、in vivo 系において生体イメージング解析を行い、Ago2-miRNA が司る遠隔臓器間代謝機構における情報伝達機構解明に取り組む予定である。
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