研究課題/領域番号 |
23650485
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
篠田 粧子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (40132055)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 鉄欠乏 / 過剰鉄 / グルタチオン / TBARS / フェリチン |
研究概要 |
鉄欠乏性貧血では生体内で鉄を貯蔵するフェリチンが極めて低く保たれており、小腸粘膜細胞も例外ではない。フェリチンは鉄を結合することで酸化ストレスの発生を抑制すると考えられており、そのため貧血状態の小腸では鉄の投与で酸化ストレスが高くなる可能性がある。 粘膜細胞の酸化ストレス関連因子を測定し、細胞内抗酸化物質であるグルタチオンが通常群に比べ極めて高い可能性を見出していたが、本研究でその再現性を確認した。鉄投与から数時間ではフェリチン発現量は変化しない(B.B.B.,74:655-658,2010)ため、貧血ラットの小腸には通常群とは異なるグルタチオンを中心とした抗酸化メカニズムが働くと推測している。 貧血時の小腸で過剰な鉄に応答する抗酸化メカニズムを明らかにするため、平成23年度は、ラットの鉄欠乏状態と小腸粘膜細胞のグルタチオン濃度、鉄投与時の小腸粘膜細胞における還元型(GSH)および酸化型(GSSG)グルタチオンの変動と細胞内の脂質の酸化について検討した。研究の成果として、貧血時の小腸粘膜ではGSH濃度が通常ラットの1.5~2倍になること、過剰鉄投与でGSH/GSSH 比率が低下すると共に総グルタチオン(GSH+GSSH)量が急速に低下すること、貧血ラットでは鉄投与により粘膜細胞内の不安低な鉄が増加するが脂質の酸化は抑制されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貧血ラットの小腸粘膜細胞の酸化ストレス関連因子を測定したところ、通常群とは異なる抗酸化メカニズムが働くと推察された。本年度は、鉄栄養状態の異なるラットを作成し、鉄欠乏による十二指腸粘膜細胞内のグルタチオン濃度の上昇について再現性を確認した。また、鉄投与時の小腸粘膜細胞における還元型(GSH)および酸化型(GSSG)グルタチオンの変動について検討した。ラットの鉄栄養状態および鉄投与が十二指腸粘膜細胞のグルタチオン濃度に及ぼす影響については、再現性も含め目的をほぼ達成した。貧血ラットの粘膜細胞では、鉄投与時の脂質の酸化(TBARS)が通常群に比べて有意に抑制されることを確認した。そこで核酸損傷(8-OHdG)を検討する前に、脂質過酸化に関連するTBARS以外の指標についても検討することとし、H2O2については測定を終了している。脂質過酸化についても概ね目標に達している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、貧血ラットへGSH枯渇剤を投与して粘膜細胞内酸化ストレスの変動を調べる。GSH枯渇剤としてPhorone、Acetaminophen、L-ブチオニン(S,R)-スルホキシミンの胃内投与により十二指腸粘膜細胞のグルタチオン濃度を低下させる投与条件について検討する。最適化された条件によって、小腸粘膜内のGSH発現量が低下した貧血ラットを作製し、各群(通常群、GSH高発現貧血群、GSH低発現貧血群)のラット消化管へ鉄を投与して、脂質過酸化の変動について検討する。GSH合成酵素、その他酸化ストレスで変動する遺伝子の発現や、酸化ストレスに関連する諸因子についても検討し、鉄欠乏によってフェリチンが低下しGSHが増加するメカニズムの解析へ繋げたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラットおよび特殊精製飼料の購入に約45万円、GSSG/GSH測定キット、Hydrogen Peroxide 測定キット、Ferritin Elisa キット等の購入に約55万円、研究補助謝金として10万円を予定している。実験動物および特殊精製飼料の購入費が本年度申請額の約40%を占める。鉄欠乏ラットを得るために最低3週間の鉄無添加飼料での飼育が必要である。また、ラット1匹の十二指腸から得られる上皮粘膜は約70~150μgであり、GHSやフェリチン測定に必要な粘膜を確保するために相当数のラットが必要である。細胞内へ鉄が取り込まれた際のFerritin量の変動はImmunology Consultants Laboratory社のRat Ferritin Elisa(単価\78,000)で、脂質の酸化(TBARS)はTBARSアッセイキット(単価\89,000)で測定する。また、貧血状態の指標として、血清鉄、UIBCをキットで測定している。
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