目的:脳・神経などは通常時にはグルコースをエネルギー源としており、炭水化物は組織に必須の栄養素であると共に摂取時に同化ホルモンのインスリン分泌を刺激するため、発達・成長の盛んな小児期は成人期より重要性が高いと考える。しかし、食事摂取基準こおける炭水化物の適正エネルギー比率は小児と成人共に同じで、その根拠も炭水化物に基づくものではない。そこで小児期の炭水化物適正エネルギー比率を新たに求ある必要がある。けれども健康な小児に採血を伴うヒト試験は実施できないため、栄養療法が唯一の治療法となる。基礎疾患のなし低身長症小児患者の治療臨床データを活用して小児の炭水化物適正エネルギー比率を推定することにした。 方法:インフォームドコンセントが得られた、低身長小児10名(男・女各5名)を対象者とした。3日間の食事調査により三大熱量素の摂取エネルギー比率を求めた。安静時代謝量はキャノピー式呼気ガス分析法で、総エネルギー消費量は二重標識水法で測定した。成長因子の指標となる血中IGF-1濃度からIGF-1SDスコアを求めた。炭水化物エネルギー%とIGF-1のSDスコアと回帰直線式からIGF-1SDスコアが零となる炭水化物エネルギー%値を求めて、小児期の炭水化物適正比率最低値を推定した。 結果:対象小児に関する測定値(平均値±標準偏差値)は、年齢5.4±0.7歳、身長97.0±4.6cm、体重13.8±2.1kg、エネルギー摂取量1188±154kcal/日、総エネルギー消費量1131±184kcal/日であった。成長蓄積分のエネルギーを考慮しても食事調査によるエネルギー摂取量はほぼ適正な値であると考えた。上記の方法で算出した小児の適正炭水化物エネルギー%の推定最小値はおよそ55となった。本研究の結果から、食事摂取基準における小児の水化物目標量、50以上70未満(%エネルギー)の下限値については今後検討する必要性があると思われた。
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