研究課題/領域番号 |
23650489
|
研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
小浜 智子 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (00364703)
|
研究分担者 |
河原田 律子 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 助教 (60383147)
中村 彰男 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30282388)
小浜 一弘 群馬大学, 名誉教授 (30101116)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 糖尿病 / 妊娠 / 魚油 / インスリンシグナル |
研究概要 |
遺伝性の強い疾患は、DNAを介して子孫に伝わるのが一般的である。しかし、遺伝的背景が全く無くても、子や孫に親の疾患の影響が及ぶこと分かってきた(Nasu-Kawaharada et al. Endocrine J 2007に発表)。本研究は、ストレプトゾトシン処理により人工的に発症させた糖尿病妊娠モデルラットを作成し、この親から生まれた仔・孫への親の糖尿病の影響を検討した。さらに作成したモデルラットに正常餌、ラード(飽和脂肪酸)、魚油(n-3系不飽和脂肪酸)の3種類の餌を摂取させ、食事の影響も検討した。糖尿病である親の影響は、生化学検査やインスリンシグナル系たんぱく質のリン酸化について解析した。生化学検査においては、血糖値は糖尿病親ラットではコントロールラットと比較して高値となったが、魚油摂取群では高値ながらもラード摂取群より低値を示した。また、仔ラットの血糖値は、出生時は高値を示したが、成長と共に低下し正常値まで低下した。中性脂肪は母・仔ラットにおいて糖尿病群で高く、その中でも魚油摂取群はラード摂取群より低下傾向を示した。n-3系不飽和脂肪酸を多く含む魚油は、母ラットや仔ラットの脂質代謝を改善することより影響を与えると考えられた。インスリンシグナルについて検討した結果、糖尿病親ラットより生まれた仔において、Akt2の発現レベルの低下とAktのリン酸化の阻害が認められた。このことから、血液の生化学的検査だけでなく、細胞内情報伝達系にも妊娠中の食事が仔に影響することが分かった。インスリンシグナル系蛋白質を指標として、親の糖尿病の影響や食事の影響をすることが示された。今後は詳細な検討を行い、糖尿病妊婦に対する魚油の食事療法への有用性を検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度計画では糖尿病の親とその生まれた子供、孫の世代間での網羅的遺伝子プロファイリング(発現遺伝子解析およびmiRNA発現解析)と機能性プロテオミクスを組み合わせて行い、次世代に受け継がれる情報を整理して基本データから、子孫へと見えない形で受け継がれる糖尿病の形質の分子カタログを作成することを計画した。実験Iとして、糖尿病妊娠モデルラットの作成し、糖尿病妊娠モデルラットのシステムを確立した。実験IIとして、網羅的解析による遺伝子発現プロファイリングを行った。糖尿病群とコントロール群のそれぞれより生まれた仔(F1)の新生児から心臓を摘出し、全RNA、miRNA、mtDNA、蛋白質をそれぞれ単離し、発現プロファイリングを行う。親から生まれた仔(F1)と孫(F2)は血糖値、コレステロール値など血液生化学的な検査をし、糖尿病の発症を確認した。miRNAは、単色ラベル法にてラベル化を行い、東レの3D-Gene"miRNA Oligo chip を用いてmiRNAのプロファイリング(miRNA発現解析)を行い、解析中である。今後も継続して解析を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度も、継続して網羅的解析による遺伝子発現プロファイリングを行い、23年度に行う予定であった動物実験の一部も引き続き行う。糖尿病群とコントロール群のそれぞれより生まれた仔と孫の新生仔から心臓を摘出し、全RNA、miRNA、蛋白質をそれぞれ単離し、それぞれの分子の発現プロファイリングを行う。(1)全RNA:摘出した心臓を細断後、全RNAを抽出する。抽出したTotal RNAはcDNA化する際にそれぞれ比較するサンプル群をそれぞれCy3とCy5でラベル(二色ラベル法)する。ラベルした各cDNAを競合的ハイブリダイゼーション法により一晩ハイブリダイズさせる。プローブを洗浄後、解析することにより、仔(F1)と孫(F2)におけるmRNAのプロファイリング(遺伝子発現解析)を行う。このことから、糖尿病に関連する遺伝子でどの様な形質がエピジェネティックにより発現制御されているかがわかる。(2)蛋白質:インスリンシグナル系およびエネルギー産生系に関わるタンパク質を中心にリン酸化プロテオミクスを行うことにより、コントロール群と比較して、それらのタンパク質のリン酸化がどのように変化するかに関して網羅的に解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に遺伝子解析を行ううえで必要な試薬やキット・消耗品を購入する費用としてあてる。さらに、動物実験を行う予定なので、動物、飼料等を購入する予定である。H23年度の未使用金額については、震災の影響で一部の動物実験を次年度に持ち越したため、その実験に使用する予定だった動物の購入費を次年度に持ち越した。H24年度の動物実験には未使用の研究費を動物購入費に充てる予定である。
|