学内の研究倫理委員会の審査を受け、承認を得た上でヒトによるエネルギー吸収効率と人工消化基質の消化度との相関を検討した。前年度の研究結果を受け、消化基質の硬化処理を行い、処理時間を調節する事で基質の消化度を連続的に変化させる事ができた。硬化処理時間および油脂添加条件を変えた4種類の消化基質を、標準食とともに飲み込み、糞便の燃焼レベルのエネルギーを測定する事によりエネルギー吸収効率を、人工消化基質の消化度を重量を測定する事により求めた。 ボランティア3名について、それぞれ2回の測定を行った。標準食におけるエネルギー吸収効率は92~89%の比較的狭い範囲に納まったが1例のみ極端に低い値(80.7%)を示した。一方人工消化基質の消化度については、4種類の組成を持つ基質のうち、硬化処理時間が長く、高濃度の油脂を添加したものが、最も消化度の個人差が大きかった(90.8%~76.9%)。両者の間で相関関係を調べたところ、一例のみの極端にエネルギー吸収効率の低い値をのぞいた場合、統計的に有意な相関関係が認められた(P=0.024)。極端に低いエネルギー吸収効率を示した測定においては、便通の不調により採取した糞便が3食分の食事に対応していない可能性があった。 以上の結果より、当初の目的であった、エネルギー吸収効率と人工消化基質の消化度との間に比例関係が認められる測定条件を設定する事ができた。今度、測定数を増やすとともに、より個人差を大きく反映する条件設定を決定していきたい。一方、今回の測定では標準食それぞれをマーキングしていなかったため、食事と糞便の対応に不確実さを残す事となった。今後、標準食それぞれをマーキングすることにより、便通が不調な個人においても、より正確な測定が可能となることが期待される。
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