研究課題/領域番号 |
23650497
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
河野 銀子 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (10282196)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高大接続 / 教育課程 / 文理選択 / 文系・理系 / 高校教育 / 大学入試 / 進路選択 |
研究概要 |
本研究は、「文系」「理系」という知の分類(あるいは枠組み)を見直す必要があるという問題意識にたち、日本社会における「文系」「理系」という二分法の生成過程( a. 教育課程調査)と、その背後にあると予測される意識の実態( b. 社会意識調査)を明らかにすることを目的としている。 具体的には、メイン調査として、「a. 高校における教育課程調査」を実施し、サブ調査として 「b. メディアにおける取り上げられ方」を調べることにしているが、学習指導要領改訂にもとづく教育課程編成変更の影響を受けにくくするため、平成23年度においては前者を精力的に実施した。 メイン調査の方法は、次のとおりである。1.『全国学校総覧』に掲載されている国公私立5,251校(高校と中等教育学校の計)から10分の1を無作為抽出して標本を作成した(525校;国立2、公立381、私立142)。2.1の抽出校から全日制普通科366校の「教育課程表」をWEB上で収集した。3.各学校が設定しているコースごとの必修科目と単位数の一覧を作成した。この作業が終了しているのは、157校(1378コース)である。 収集した教育課程表の表記方法がかなり多様であるため、現在、その統一を進めるとともに、全単位数に占める必修科目の分布や選択科目の設定のされ方等について分析し、教育課程が「文系」「理系」によってどのように編成されているかを把握しようとしているところである。 サブ調査については、社会意識調査の一端として、「文系」「理系」に関してなんらかの記述がある文献を読み、論者の認識や、時代ごとの傾向などを捉えているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、「教育課程調査」は、平成23年度は関東と近畿、平成24年度には北海道・東北を調査対象として設定していたが、学習指導要領の変更にともない数学と理科については平成24年度入学生から新学習指導要領による指導が実施可能となるため、調査が2年度にまたがらないようにした。また、この変更が「文系」「理系」の教育課程の編成内容に与える影響をのちに把握することができるように、地域を限定するのをやめ、無作為抽出による全国調査を実施した。 結果的に、地域を拡大し、調査機関を短縮したことになる。そのため、「教育課程調査」にかける時間配分がかなり大きくなった。しかし、もともとメイン調査として位置づけていたことから支障ないと思われる。むしろ、調査の精度はあがったと考えられ、今後の研究展開にとっては有益なものと考えられる。 サブ調査として実施するメディア分析による社会意識の把握は、「教育課程調査」と違って必ずしも平成23年度に実施しなければ妥当な結果を得られないという性質のものではないため、24年度に実施しても支障ない。 以上から、大きく進んだ点と少々進められなかった点が混在しているものの前者の有意性が高いと考えられるので、(2)と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に実施した「a.教育課程調査」によって収集した教育課程表を統一する作業を早急に終わらせ、教育課程編成に関する具体的な分析にとりかかる。先行研究によれば、小中学校と異なり、高校の教育課程はかなり多様であるものの、進学率や進学先によって、ある程度の傾向が見いだせるといわれている。とくに、「文系」「理系」というコースの設定や選択には、進学状況との関連があるとみられている。これらを踏まえ、本研究では、進学状況を示す指標を用いて、それらと教育課程の編成の関連をみていく。この指標として、研究者らが使用することの多い『全国高校中学偏差値総覧』(関塾)を利用して、なんらかの層を作成して分析する。 また、教育課程調査を補強するために、高校で実際に教育課程の編成にたずさわったことのある教員を対象に、その方法や考えについて尋ねるインタビュー調査を実施する。これは地域を限定して実施する予定である。 「b.社会意識調査」については、全国紙上の記事の分析を行う。具体的には、「文系・理系」「文科系・理科系」「文理」などのキーワードを検索して、それらの語の用いられ方や用いられている文脈について分析する。分析対象期間は、戦後から現在までを想定している。 以上の「a.教育課程調査」と「b.社会意識調査」の結果をまとめ、 戦後日本における「文理・分離」の実態を描き出し、その背景を考察する。その際、理系研究者による情報や意見等も参考にする。研究の経過や終了段階においては、学会などで積極的に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、「a.教育課程調査」も「b.社会意識調査」も、調査方法や方針は研究代表者による吟味にもとづいて決定する必要があるが、その実施は必ずしも研究代表者のみが行う必要はない。しかも平成24年度は最終年度にあたるため、時間的ゆとりもない。もとより一人で実施できる量をはるかに超えているため、それぞれの調査において、適宜、アルバイトやアウトソースを利用する。そのための、経費が発生する。 「a.教育課程調査」において実施する教育課程編成に携わった経験のある高校教員に対するインタビュー調査は、研究代表者が行う。場合によって補助の帯同もありうるが、テープ起こし等の作業にかかる者への謝金が発生する。 また、研究代表者は理系の専門ではないため、情報収集や意見交換のために理系研究者への聞き取り調査を実施する。これらの旅費とともに学会発表のための旅費等が適宜必要となる。
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