大学院教育では専門的知識・能力の修得に加え、研究構築力や研究倫理を含む倫理観の修得が焦点となりつつあることを背景として、本課題は、日本の実情に適合的で、分野別の特性にも配慮した研究倫理の大学院レベル教育コースを開発することを目的とする。 平成24年度においては、実施計画のうち、a)国内の大学・研究機関の研究倫理教育事例調査については、大学等の研究倫理教育の実践例とその成果に関する情報の収集を行った。b)海外の事例調査に関しては、昨年度に引き続き、米国大学院協議会(CGS)が2004年から2011年にかけて実施した研究倫理に関するプロジェクトに関して情報を入手するとともに、その内容を分析した。c)学会単位のガイドライン等の調査については、昨年度入手した文系を含む全分野の主要880学協会について倫理規定や研究不正に関する規定等の関連情報を整理するとともに、d)安全規制等の公的ガイドライン、法的規制等についても昨年度に続いて収集を行った。e)教育内容(教材、カリキュラム等)の開発に関しては、2時間ないし数時間の短期コースの開発、生命医療系等ヒトを対象とする研究分野の研究倫理教育の開発に着手した。また、責任ある研究実践の主要課題である論文発表におけるグレーゾーンの扱いに関して、「バンクーバー・ルール」を主題とした教材の開発に着手した。これらについては、教材等の開発と並行してf)教育方法の開発(講義等での試行実験)を行い、試行に関してビデオ記録を行い、分析に備えた。 なお、研究代表者の転出により本課題は廃止となったが、これまでに収集・分析した情報やその他の成果は研究分担者や他の研究者に継承されており、研究代表者を含め何らかの形で成果をまとめ、実践に活用する予定である。
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