研究課題/領域番号 |
23650500
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 瑠美子 東京大学, 環境安全本部, 助教 (50508421)
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研究分担者 |
大島 義人 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70213709)
戸野倉 賢一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (00260034)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 化学物質管理 / 安全教育 / リスク評価 / 化学物質拡散濃度測定 / 大学実験室管理 / 作業環境管理 |
研究概要 |
本研究では、大学の実験系研究室において、学生を中心とした実験作業者によって取り扱われる化学物質の使用実態を明らかにするとともに、実際のデータに基づいた実効的な教育・管理手法を提案することを目的としている。現在までに、以下の検討を進めている。 まず、大学全体の化学物質利用実態の平均像を明らかにするため、(1)本学の薬品管理システムに登録された化学物質について、購入量、使用量、在庫量などのデータを元に、化学物質使用パターンの解析を行った。(2)本学にて報告された化学物質関連事故事例を、化学物質の種類や事故の種類により分類し、事故パターンと物質の種類の関係を調べた。 次に、大学の実験室における化学物質の使用実態を定量的に表すモデル構築手法の検討と、モデルを用いた教育・管理手法を提案するスキームに関する検討を行った。モデル化の基礎的データ取得のため、(3)実験作業を動画として記録し、手の動きと作業時間に着目して要素化を行った。(4)まずある学問分野に限定して使用頻度の高い化学物質を調べるとともに、その分野の学生に対して化学物質に関する知識やイメージを問うアンケートを実施し、評価軸の抽出を行った。(5)化学物質の暴露は目に見えず、事故として報告されにくいために安全意識が低くなりがちである。そこで、実験作業による化学物質拡散挙動をリアルタイムにモニタリングし、可視化する手法を検討した。実際にアセトンによるビーカー洗浄などのいくつかの模擬作業について、拡散挙動の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬品管理システムデータ解析、アンケート・ヒアリングによる調査は計画通り進めている。当初の計画とは研究手順を変更し、2年目に行う予定であった化学物質拡散挙動のリアルタイムモニタリングを行い、模擬実験による実験作業と化学物質暴露リスクの相関の検討に着手した。1年目に行う予定であった、実験室稼働状況モニタリングは、計画を練り直している段階であり、2年目に実施予定である。また、化学物質利用実態のモデル化に向けたパラメータの取得は計画通り進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
薬品管理システム登録データについて、分野ごと、試薬の種類ごと、各試薬の保有期間などのさまざまな切り口でさらに詳細にデータ解析を行い、その結果を踏まえ、化学物質の種類ごとの実験作業内容に関するアンケート・ヒアリングを行い、研究分野などにより使用パターンを整理する。実験室稼働状況モニタリングを行い、化学物質使用実態モデル化のための基礎データとする。学生の化学物質に対するイメージや知識に関するアンケート調査を引き続き行い、イメージが作業パターンに与える影響を明らかにする。さまざまな実験作業を想定した化学物質拡散挙動モニタリングを行うとともに、計算機シミュレーションによる拡散挙動の予測を行い、教育ツールとして提案する。 以上のデータを元に、大学における化学物質使用実態の平均像を、大学規模や分野・学部規模で整理し、管理ポイントを抽出する。また、実験室での作業に基づく化学物質使用実態のモデル化を行う。まずはパターン化した利用状況が想定される作業や研究室を対象にケーススタディを行い、モデルの検証と改良を行う。 モデルを用い、実効的で効果的な作業環境管理手法など、より具体的な化学物質管理・教育手法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験室稼働状況モニタリングのため、ログデータを取得、記録するためのカメラとパソコンを購入する。化学物質拡散挙動測定のため、測定機器をレンタルする。試薬やガラス器具、作業環境測定のための検知管等の消耗品を購入する。データ解析作業を行う人件費(謝金)や、研究成果発表及び研究打ち合わせのための旅費にも使用する予定である。
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