研究課題/領域番号 |
23650512
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩崎 秀樹 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50116539)
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研究分担者 |
馬場 卓也 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (00335720)
松浦 武人 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70457274)
國本 景亀 高知大学, 教育学部, 教授 (10144792)
銀島 文 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター, 総括研究官 (30293327)
真野 祐輔 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (10585433)
阿部 好貴 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40624630)
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キーワード | 数学的リテラシー / 数学教育の目的・目標 |
研究概要 |
本科研では,「リテラシー」と「数学教育学」との相互照射のもとで,とくに後期中等教育段階に焦点をあてて理念的・原理的な考察を行い,数学教育学の新たな課題領域を創出することを目指している。そのため平成23年度は科研メンバーで9月と3月に2回の研究者集会を開き,研究のキー・コンセプトの明確化および研究の理論的基盤の整備をおこなった。 平成24年度は科研メンバーで9月に研究者集会を開催した。研究集会では,本研究のキー・コンセプトである「数学的リテラシー」の捉え方が議論された。数学的リテラシーは「活用力」といった矮小化された捉え方がなされうるが,このような数学的リテラシーの捉え方を批判的に考察し,数学教育の目的・目標を改めて議論する必要がある。このような課題意識のもと,批判的数学教育学の視点からは,公教育として民主主義社会の形成のためのリテラシーのあり方,そして数学と現実との関わり方について議論した。また,フランスの数学教授学者Chevallarardの論考をもとに,数学教育の目的・目標が数学の有用性に矮小化されることに対する批判的検討,そして,数学的リテラシーとして数学と文化・社会との関係を議論した。これらの議論の成果は,研究代表および研究分担者によって,研究論文または学会研究発表としてまとめており,数学的リテラシーの視座から,数学教育の目的・目標に関する新しい課題領域の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,数学教育研究の焦点を後期中等教育の「数学」にあて,これまでの大学進学に向けたhiddenカリキュラムを払拭すべく,社会と数学との関係性をリテラシーという視座から社会学的に検討し,数学教育学の新たな課題領域を創出することを目的としている。そのため平成23年度は科研メンバーで9月と3月に2回の研究者集会を開き,数学的リテラシーを単なる流行の研究テーマにしないための具体的な課題を議論し,数学教育学の視座から課題群の創出をおこなった。初年度においては,研究課題を数学教師教育に焦点化させ,数学教師教育の課題を同定し,さらにその課題解決の方策としての授業研究のあり方を検討した。 2年目となる平成24年度は科研メンバーで9月に研究集会を開き,本研究のキー・コンセプトである数学的リテラシーの捉え方に関して,批判的数学教育学の視点,そして,フランスの数学教授学者Chevallarardの視点という2つの視点から考察をおこなった。数学的リテラシーは,ともすれば「活用力」といった矮小化された捉え方がなされうるが,このような数学的リテラシーの捉え方を批判的に考察し,数学教育の目的・目標を改めて議論した。 その成果の一端として,研究代表者と研究協力者(大滝・新居)の3名で,「数学教育における目的・目標論再考」を標題とする論考を「日本数学教育学会誌」に投稿し受理されている。また,研究代表者と研究分担者(馬場)と研究協力者(植田・伊達)の4名で「Values in Japanese mathematics education: their historical development」を標題とする論考を国際学会誌「Zentralblatt fur Didactik der Mathematik」に投稿し受理されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,夏と春の2回の研究者集会を企画している。昨年度は大学研究者だけの集会を実施したが,本年度は学校現場で教鞭を執る実践者に声をかけ,現場的な視座から,課題を掘り起こしていきたいと考えている。また,科学教育学会の年会において分科会を企画し,これまでの研究成果を問うとともに,本科研事業の成果をどのようにまとめるのかの基盤としたい。そして,研究分担者全員による,研究論文執筆投稿を企画したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は夏と春の2日の研究者集会を企画している。またその中で,本研究と関わりが深い研究者を招聘し,講演を企画している。そのための旅費・謝金として研究費を活用したい。また,学会において本科研の分科会を企画している。このための旅費として研究費を活用したい。
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