1.最終年度では、(1)開発した小型化分子運動視覚化教材装置の振動除去の改良および(2)さらなる応用可能な授業分野の探索と適したモデル分子系の開発を行った。 (1)装置の改良に関しては、可動底板の重量を軽くすることによって、装置全体の振動を低減させることに成功した。これによって低振動数領域から高振動数領域まで安定な稼働が可能になった。 (2)応用可能な授業分野の探索と適したモデル分子系の開発に関しては、鎖状高分子の二次構造の可逆的形成・崩壊を表現できるモデルおよび同種原子・分子の二量体形成反応モデルの開発を行った。前者では、仮想ポリアミド高分子モデルおよびポリペプチドモデルを、側鎖として水素結合を表現するための磁石付きボールを結合したスーパーボールを糸で連結することによって、作製した。これらのモデルを装置に入れ振動させることによって、高温でのランダムコイル構造と低温でのらせん構造の間の可逆的変化を実現することができた。さらに、モデル鎖の一部にターン構造を導入することによって、ランダムコイル構造からシート構造への可逆的変化も表現できることが分かった。後者に関しては、スーパーボールに複数の磁石を埋め込むことによって、同種原子・分子の二量体形成反応モデルを実現できた。衝突による会合・解離の様子の提示、存在種の数の計測からの平衡定数の算出、温度変化に伴う平衡定数の変化、および、反応カーブの解析から速度定数や活性化エネルギーの算出を示すことが可能となった。 2.研究期間全体を通じて、改良した分子運動提示装置と開発したモデル分子系の組み合わせによって、物質の状態変化、化学反応、高分子の構造変化などの相互作用のある分子系の挙動を良く表現できることが明らかになり、中学校から高校、大学に渡る教育内容に即して、物質の粒子的・運動論的概念理解の促進に利用できる可能性を広げることができた。
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