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2011 年度 実施状況報告書

体験型環境教育としてのエコツーリズムの手法開発

研究課題

研究課題/領域番号 23650516
研究機関首都大学東京

研究代表者

小崎 隆  首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00144345)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード環境教育 / エコツーリズム / 観光科学
研究概要

本研究はエコツアーを体験型環境教育ツールとして利用し、一般市民に対してこれまでの研究成果を平易な表現により地球・地域環境問題の原因、プロセス、軽減と防止手法、ひいては社会の持続的発展のあり方を考究する「時と場」を提供するための方法論の確立を目的としている。本年度は以下の項目について研究を実施した。1)エコツアーの先進事例の批判的解析:米国中西部において、観光資源としての地質、地形、農業、土壌の博物館などにおける展示やガイドの説明情報を収集した結果、それら相互の「関連性」を、ツアー参加者へ平易に解説する重要性が明確になった。一方、視認困難な環境問題(土壌侵食や汚染など)は、「図・表・アニメーション」を多用しての解説が不可欠であることが痛感された。フランス西部地域では地形、地質、ワイン生産との関連性が良く解説されていたが、そのためには長年にわたる環境モニタリングが必要であり、そのような体制を整備することができる地域は限定的であることが分かった。イタリア中部地域では、博物館などの歴史・文化資源と農村観光との有機的な結合がツアー参加者の強い興味を喚起することが明らかとなった。2)ニジェールの砂漠化をテーマとしたエコツアーのためのコンテンツの整備:砂漠化防止農法(耕地内休閑システム、都市ゴミ施用による地力回復など)、NPOによる現地農民と野生動物のための水資源確保、砂漠化防止と農村の内発的発展を支援する小口金融支援のコンテンツを収集し、1)の批判に基づき、それらを<問題設定-砂漠化の原因-地域社会への影響-対策>というコンテクスト化に沿って、エコツアー教材を作成した。3)エコツアーを補助するスマートフォン用アプリケーションの開発:i-phoneを用いて環境情報(土壌)を容易に、かつ、常時参照できるようなアプリ「Soilなう」を開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

米国・フランス・イタリアにおけるエコツアー先進事例の解析からは地形、地質、産業、文化と環境資源利用を相互に連携するようなコンテクスト化がよく理解できたものの、本研究のテーマであるサヘル地域の砂漠化に応用するためには、基礎情報が不足している側面が明らかとなり、そのための追加的情報整備が不可欠であることが明らかとなった。一方、砂漠化の防止と修復に関する現地での先進研究に関しては、最新の情報を収集することができ、先例を見ない新鮮かつ具体的なツアーコンテンツを整備できたと高く評価できる。さらに、これらのコンテンツのコンテクスト化に関して具体的な考え方を整理する一方で、環境情報をスマートフォンにより手軽に参照できるようなアプリケーションを試作でき、今後の研究を進展させるための具体的な方向性が定まったと考えられる。 以上のような実績から、本研究が順調に進捗しており、今年度の目標は十分達成されたと判断される。

今後の研究の推進方策

本年度は体験型環境教育ツールとして利用できるようなエコツアーの企画ならびにそのプロモーション、それを用いた環境教育効果の評価を目的として、以下の課題を設定して、研究を推進する。1)環境教育教材の作成:バーチャルエコツアーのための教材(プロモーションDVD、ガイドブック、スマートフォン用アプリケーションなど)を開発・改良する。2)環境教育効果の評価:1)を用いて大学での授業やNPOなどの主催する市民講座など(例えば、本学教養科目の一つとして開講されている「自然・文化ツーリズム入門」など)で講演を実施し、その前後におけるアンケートにより砂漠化防止に関する環境教育効果を判定する。3)エコツアー内容の改善:2)の結果をエコツアーによる環境教育効果判定のシミュレーションとしてとらえ、それに基づいて必要と考えられるエコツアーの内容の見直しと改善を行う。4)エコツアー第2弾「水田にされた砂漠!」の企画調査:「ニジェールの砂漠化」に加えて「中央アジアの土壌塩類化」を新たなテーマとするエコツアーを提案するための現地調査(カザフスタン)を実施する。具体的には、現地の研究協力者(カザフ科学アカデミー土壌・農芸化学研究所、生物学研究所など)とともに、コンテンツの発掘、現地における移動手段・宿舎の確保や研究機関などの受け入れ状況の調査、安全対策などについて検討する。

次年度の研究費の使用計画

1)上記1)の教材開発・改良(特にスマートフォン用アプリケーション)ならびに2)の環境教育効果判定のための講演実施に用いる携帯型パーソナルコンピュータ導入のための物品費を計上する。2)上記4)のカザフスタン現地調査(成田-アルマティ-アスタナ往復、1週間、1人、1回)を実施するための旅費を計上する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Fallow Band System, a land management practice for controlling desertification and improving crop production in the Sahel, West Africa: 1. Effectiveness in desertification control and soil fertility improvement2011

    • 著者名/発表者名
      Ikazaki, K., H. Shinjo, U. Tanaka, S. Tobita, S. Funakawa, and T. Kosaki
    • 雑誌名

      Soil Science and Plant Nutrition

      巻: 57 ページ: 573-586

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aeolian materials sampler for measureing surface flux of soil nitrogen and carbon during wind erosion events in the Sahel, West Aftica2011

    • 著者名/発表者名
      Ikazaki, K., H. Shinjo, U. Tanaka, S. Tobita, S. Funakawa, and T. Kosaki
    • 雑誌名

      Trans. ASABE

      巻: 54 ページ: 983-990

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Field-scale aeolian sediment transport in the Sahel, West Africa2011

    • 著者名/発表者名
      Ikazaki, K., H. Shinjo, U. Tanaka, S. Tobita, S. Funakawa, and T. Kosaki
    • 雑誌名

      Soil Science Society of America Journal

      巻: 75 ページ: 1885-1897

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Biodegradation kinetics of monosaccharides and their contribution to basal respiration in tropical forest soils2011

    • 著者名/発表者名
      Hayakawa, C., Fujii, K., Funakawa, S. and Kosaki, T.
    • 雑誌名

      Soil Science and Plant Nutrition

      巻: 57 ページ: 663-673

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Distribution of Ultisols and Oxisols in the serpentine areas of East Kalimantan, Indonesia2011

    • 著者名/発表者名
      Fujii, K., Hartono, A., Funakawa, S., Uemura, M., Sukartiningsih, Kosaki, T.
    • 雑誌名

      Pedologist

      巻: 55 ページ: 1-7

    • 査読あり
  • [学会発表] 森林土壌中の溶存有機物の下方浸透量の定量評価2011

    • 著者名/発表者名
      藤井一至、早川智恵、森圭子、真常仁志、舟川晋也、小崎隆
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2011年度大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2011年8月9日
  • [学会発表] C-14トレーサー法を用いた森林土壌におけるセルロース分解プロセスの速度論的解析2011

    • 著者名/発表者名
      早川智恵、藤井一至、舟川晋也、小崎隆
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2011年度大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2011年8月9日
  • [学会発表] 半乾燥熱帯の畑作地におけるCO2発生量および土壌炭素蓄積量に土地利用が与える影響~タンザニア・モロゴロ県を事例として~2011

    • 著者名/発表者名
      杉原創、舟川晋也、Kilasara Method、小崎隆
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2011年度大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2011年8月9日
  • [図書] 環境の保全と修復に貢献する農学研究2012

    • 著者名/発表者名
      日本農学会編
    • 総ページ数
      159-163
    • 出版者
      養賢堂

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公開日: 2013-07-10  

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