研究課題/領域番号 |
23650517
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
浅井 紀久夫 放送大学, ICT活用・遠隔教育センター, 准教授 (90290874)
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研究分担者 |
高橋 秀明 放送大学, ICT活用・遠隔教育センター, 准教授 (30251002)
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キーワード | 拡張現実感 / 科学館 / 構成主義 / 学習環境 / インタフェース |
研究概要 |
本研究の目的は、科学館の展示において拡張現実感環境を構築し、体験を通して知識や概念を構成するような学習を提供する仕組みを作ることである。そのために、拡張現実感を利用した提示手法や学習コンテンツを開発する。 当該年度は、科学館の展示において、楽しく学べる学習コンテンツの素材を作成した。科学館展示の題材として自動車を選定し、20世紀前半に活躍したT型フォードの3次元モデルを構築した。現代産業科学館の協力を得て、実際の展示に供されているものと同じ型を採用し、内部構造も再現した。 昨年度の研究結果から、現実世界に仮想物体を重ねて表示する機能の安定性が、コンテンツの評価に大きく影響することがわかった。そこで、拡張現実感の幾何学的整合の安定性を改善するため、マーカ・ベース・トラッキングのマーカとして照かりにくい素材を使ったり、複数カメラを用いたりすることにより幾何学的関係が安定的に算出される仕組みを組み込んだ。ただ、臨場感を創出するという程度の精度は実現できておらず、計算負荷の増大に伴う遅延の影響も懸念され、改善の余地を残している。 実験室環境において、テーブルトップで利用可能な学習コンテンツを、科学館での利用、学習環境としてのインタフェースという観点で評価した。その結果、学習コンテンツ自体の面白さと複数人が協調しながら作業を進める状況を作り出すことが重要であることが確認された。拡張現実感を利用した提示手法や学習コンテンツは、この両方の要素を持ち合わせており、科学館展示に適していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科学館展示での拡張現実感学習環境の構築において、学習コンテンツの開発及び評価実験に関しては当初計画していたところまで達したと考えている。前者については、実際の展示に供されている実物の3次元モデルを構築した。後者については、実験室環境において、テーブルトップで利用可能な学習コンテンツを評価した。しかし、学習コンテンツの素材制作において3次元モデルの作成に時間がかかり、拡張現実感の幾何学的整合の安定性を改善するために、従来の手法を採用することはできたが、光学的整合性を改善するための要素技術を十分には検討することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
科学館展示の学習コンテンツに組み込むための素材制作を引き続き進める。また、カメラの位置姿勢情報を取得するために、マーカレス・トラッキングの仕組みを検討する予定である。さらに、インタラクティブ性を高めるための仕組みを組み込み、楽しく学ぶための環境を構築する予定である。ただし、拡張現実感環境での本格的な学習が可能になるように、さまざまなマルチメディア・コンテンツや一連の操作を実装することは難しい状況になっており、本研究における評価は科学館展示での拡張現実感学習環境の学習効果を対象とするのではなく、機能的な動作確認やシステムの安定性を対象にする方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、システム機能の改良及び学習コンテンツの構築を中心に研究を進める。システム機能の改良については、拡張現実感における幾何学的・光学的整合性を高める要素技術を検討する。学習コンテンツの構築については、素材制作を進めると同時に、インタラクティブ性を高めるため、利用者が現実世界での視点を変更できる仕組みを構築する予定である。システム機能の改良及び学習コンテンツの構築を行うための開発費が必要である。また、これらを実装したり、評価したりするための装置を必要とする。システムや機能の評価について、当該研究分野の学会等で発表する予定であり、そのための旅費が必要である。
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