研究課題/領域番号 |
23650519
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
剣持 信幸 佛教大学, 教育学部, 教授 (00033887)
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研究分担者 |
黒田 恭史 佛教大学, 教育学部, 教授 (70309079)
深尾 武史 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (00390469)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 数学的活動 / 数学的モノづくり |
研究概要 |
本研究は「地球温暖化現象」をテーマとし、生徒が主体的に取り組む≪数学的活動≫の教材開発及び授業設計を目的として出発したが、平成23年3月11日の東日本大震災を契機に、研究手法や基本的な計画を変えることなく第2のテーマとして「東日本復興デザイン」を加えた。これをいきなり教材化するのではなく、復興の数理モデルそのものを構築することから始め、数理科学の立場から「復興」をどのように捉えるかの検討を行った。この過程で、「相互支援」「自立復興」「環境と経済」等を、数理の世界で量としてとらえる数学的表現についての考え方が提案された。これは、数理の世界におけるモノづくりであり、これまで漠然としていた学習教材としての「数学におけるモノづくり」の具体例となった。 研究初年度の最大の目的は、モノづくりを基調にした≪数学的活動≫の理念の確立であったが、上述の意味でこの目的は達成されたと言ってよい。また、この「数学におけるモノづくり」については、数学教育学会やオランダで開かれた国際ワークショップにおいて本研究組織メンバーにより紹介された。我々の教材化の手法は「モデル化学習」を採用することであるが、テーマ「東日本復興デザイン」におけるモデル化は、ただ単に現状を数理的に捉え将来予測をするというより、数理を道具とし「未来をデザインする」ことに主眼があり、まさに「数学を創造」する学習活動に発展する教材化の可能性がみえて来た。今年度は基礎研究の部分で極めて大きな成果があったと評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画は、「地球温暖化現象」を主テーマにモデル化学習の形態をとる≪数学的活動≫の授業設計であった。第2のテーマとして「東日本復興デザイン」を追加したことで、事象のモデル化に新たな側面を発見することが出来た。前者のテーマでは、事象を、過去の(数値的)データをもとにそのメカニズムを解析し、そこから将来の推移を予測し、我々の現在の生活様式にいくつかの警鐘を与えることが主であった。これに対し、後者のテーマでは、参考にする過去の数値的データは十分ではないが、我々が模索する近未来の人間生活環境のデザインをもとに、その具現化が現在からの延長線上で可能であるかどうかを探るため、数理科学的立場からモデル化を行いその数値シミュレーションを行うことが主である。 これは、数学的モデル化活動が、事象を数学的に捉え理解することから、新事象を数学的にデザインし創造することへ一歩前進したことを意味する。学校数学教育の≪数学的活動≫の授業設計の可能性も格段に幅が広がったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に提示した研究計画では、研究成果発表を目的とする国際会議を最終年度に開催する予定であったが、これを外国人招聘者の都合により研究2年目に変更した。この他に、基本的な変更はない。1.今年度は、初年度で基本的方針が確定したテーマ「地球温暖化現象」と「東日本復興デザイン」の教材化と同内容の≪数学的活動≫のシナリオを作成し、その予備実践を高専で行う。2.高専での予備実験の結果分析から、高等学校・中学校での授業実践に備えて、≪数学的活動≫の授業設計の改善点等を洗い出す。それらを修正したうえで、本格的な授業実践を行う。3.授業実践のビデオを、≪数学的活動≫を伴う教材開発の手法を習得するための教材研究用として編集する方針を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.最終年度に開催を予定していた国際研究集会が外国人参加者の都合により、平成24 年度に開催することになった。11月5-9日(京都)に開催する。外国人参加者は15名(主としてポーランド、ワルシャワ大学の研究者)、日本人参加者35名を予定している。外国人招聘者10名の宿泊費(10人x1万円(1泊の宿泊費)x6日=60万円)を基金から支払う。また、会場整備のための謝金8万円を基金から支払う。2.年度末数学教育研究会(於:京都)の開催費14万円を基金より助成する。3.研究打ち合わせ旅費: 京都⇔東京 6万円x1回=6万円、京都―広島 3万円x1回=3万円 を基金より助成する。4.研究成果発表旅費:京都‐東京 6万円x2回=12万円を基金より助成する。5.その他(消耗品費等)3万円
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