研究課題
第一に,前年度に構築した実験システムを運用レベルのシステムに拡張し,大学の授業評価で実際に用いるとともに,学生および教員によるシステムへの評価を確認した。第二に,入力値分析で中心とした「自己情報量の総和」という匿名性水準の測定技法に関して,前年度に続けて尺度としての適用可能性の検討を行い,同尺度の利用が授業評価を超えたDSS研究等に結びつき得ることを具体的なシステム設計案とともに示した。最終年度として,英語論文誌および国際会議での発表を行い,これらの成果の国際的発信に力を入れた。第一の運用システムの評価の点では,本システム開発が目的とした匿名化処理の価値や,本システムの匿名化処理がより正確な授業評価データに役立つかどうかを問う設問で,学生側から高い肯定的評価が得られた。これらの点から,本研究の目標は概ね達成できたものと判断する。一方,教員側の評価は必ずしも肯定的でなかった。この問題は本システムが学生側の個人情報漏洩の防止を主眼とする一方,教員側にシステムの理解など新たな負担を課す側面があることと関係があると判断された。ただし,教員側の操作性を高める機構をさらに組み込む開発余地はあり,将来的改善は可能と見込む。第二の匿名性尺度としての理論拡張の点では,匿名性水準を自己情報量の総和として計算する本研究の尺度(可能な組み合わせ数の対数を取る形式となる)が授業評価以外の社会調査や投票等の社会的選択の領域に適用しうることを示した。特に,投票者の匿名性をより厳密に保証する電子投票システム等,新たな DSS研究に結びつくことを具体的なシステム設計案とともに示した。あわせて,本研究の尺度が通信システムの領域でCombinatorial Approachの尺度として知られる匿名性尺度と類似しており,提出時期としてそれらに先立つ位置にあることを確認した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
信学技法
巻: Vol.112, No.457 ページ: 133-138
Journal of Socio-Informatics
巻: Vol.5, No.1 ページ: 11-25
社会情報学
巻: 第1巻1号 ページ: 73-79
http://www.si.gunma-u.ac.jp/~iwai/research/kaken23650526/index.html