研究課題/領域番号 |
23650528
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中山 実 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (40221460)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 眼球運動 / 瞳孔 / 内容理解 / 理解度 / 回答評価 |
研究概要 |
本研究の目的は、文章などの提示情報に対する眼球情報の特徴から、内容の理解度を推定評価する手法を開発することを目的としている。眼球情報とは、眼球運動、瞳孔などの生体情報である。 本研究では提示情報の理解過程における眼球情報の特徴を抽出し、それらの情報から提示内容の理解度を推定する手法を開発確立した。具体的には、記憶-再認課題の実験によって、各過程での眼球情報を計測し、それらの特徴によって、回答正誤、正答率などで表される理解度の予測モデルを構築し、その利用可能性を検討した。(1)記憶-再認過程における眼球情報特徴の抽出:記憶-再認実験において、記憶、再認、判断の各過程における眼球情報を計測し、文章理解、再認のパフォーマンスと眼球情報の特徴との関係を分析した。眼球運動の情報から、サポートベクトルマシンによって、回答正誤を判別分析した。(2)知覚行動の計測評価手法の確立:課題回答時の眼球運動、瞳孔径および視覚誘発電位を同時計測するシステムを開発した。この計測によって得られた特徴から、注視している刺激サイズの推定を行い、その性能評価を実施した。(3)理解に基づく回答正誤の推定に有効な眼球情報特徴の抽出:記憶-再認課題で収集された、眼球情報の特徴と回答正誤の関係を表現する数理モデルを構築し、眼球情報のどのような特徴情報が、回答正誤の予測に有効なのを検討した。また、時系列データから、理解の状態を推定するために、隠れマルコフモデルを導入し、2つの確信度の状態を導入して、理解の状態が時間とともに変化する過程を予測するモデルを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画どおりに、実験評価を行った。眼球運動の特徴に基づく、回答正誤の推定については、全体の平均値による判別分析から、時系列データによる隠れマルコフモデルを用いた状態推移モデルを検討した。また、提示した情報が読み取られているかを検討するために、提示情報の刺激サイズを推定する実験では、眼球運動、瞳孔、後頭部の事象関連電位を同時計測できる仕組みを確立した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)記憶時の眼球情報から理解度の推定:記憶-再認過程の再認過程に着目したが、次年度は提示内容の理解と記憶の過程での眼球情報を分析し、記憶時の時点での理解度を記憶-再認課題における、記憶過程の眼球情報の特徴から、理解度である再認課題での正答率を予測する数理モデルを構築する。記憶課題の難易度による再認課題の正答率の変化と、眼球情報の特徴量の変化を分析し、記憶時の眼球情報からの理解度の推定性能を向上させる。(2)再認方法や提示内容の特徴の拡張:理解度の評価に、強制二肢選択法だけでなく、多肢選択など他の方法による再認方法にも適用できる評価手法を開発する。すなわち、提示内容に対する理解度の評価方法を多様化させ、眼球情報による理解度の推定手法を拡張させる。この方法によって、画像提示のように再認すべき内容が文章で明示的に示されていない内容についても、再認評価できる。(3)研究の総括:これらの結果を基に本研究の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の執行額に残額が生じた状況:視覚誘発電位計測のために生体アンプを購入する予定であったが、他の研究で購入したアンプが利用可能であることから、この経費を次年度の実験実施のための人件費・謝金および成果発表の旅費として利用する。(1)実験実施のための備品費:実験のための刺激作成および提示の実験プログラム作成のソフトウェアの経費、事象関連電位の計測のための電極などの消耗品を購入する。(2)研究調査および成果発表の旅費:眼球情報ならびに計測情報からの判別予測のためのパターン認識などの研究会に参加し、研究調査を行う。本研究の成果についても継続的に発表し、意見収集を行い、今後の研究に反映させる。(3)実験実施にかかる謝金:実験プログラムの作成及び実施、実験に参加する被験者への謝礼などを謝金として支出する。
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