研究課題/領域番号 |
23650529
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山本 洋雄 東京工業大学, 教育工学開発センター, 東工大特別研究員 (70345768)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子教科書 / 電子ノート / 形成的評価 / リアルタイム授業改善 / 5因子性格検査 / 学習行動 |
研究概要 |
電子教科書や電子ノートなどのICT活用メディアに関する先行研究をサーベイした.その結果,メディアを単なる学習支援ツールとした研究や利用結果を事後に解析する研究は行われているものの,学習態度に対する形成的評価を行うために,学習中にデータを収集するツールと位置づけた研究はほとんど見当たらなかった.そこで,これらのツールが能動的・主体的学習を促し教育効果を高めるための形成的評価データ収集ツールとしても活用できることを検証するため,実証実験システムを構築した.まず、電子教科書を模倣するものとして,学生一人一人が教材資料のページをそれぞれ自由にWebで閲覧できるとともに,その閲覧ページの時間経緯に沿った履歴ログを学生別に収集できる簡易実験システムを開発した.また,電子ノートを模倣するものとして,学生が書き込みを行えるPDF形式の資料を作成した. これらのツールから収集されたデータで推定する「学習態度」は,学生一人一人がもつ異なる「学習行動様式」に基づいて発現するというモデルを仮説設定した.先行研究調査を踏まえ,この「学習行動様式」のデータ収集方式として「5因子性格検査」を採用した. 前述の実験システムを用いて,研究協力者の所属する専門学校の授業(「アサーション・トレーニング」,受講者60名)でこれらのツールを用いた実証実験を実施し,学生別の学習態度に関するデータとして,教師の提示ページと学生の閲覧ページの一致時間比率,PDF資料への書込み数などのデータを収集し,「5因子性格検査」との相関を分析した.その結果,いくつかの項目間に相関があることが示唆された.今後の研究を進める上で,本実験システムと本実験手法が有効であるとの確証を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基本的フレームワークと実証実験システムに関する確認が取れたため,平成24年度以降に本格的な実証実験を実行できる目途が立った.特に,実験システムを利用した学生の各ツールに対する評価も良く,実験に対する支障は生じないことも判明している.また、前述したとおり平成23年度に収集したデータからも,興味深い相関関係がいくつか判明しているため,これらを更に詳細分析しその結果を平成24年度の実証実験に反映させることもできると考える.なお、申請時点ではNEC製のコラボレーション支援システムを貸与してもらう予定であったが、認可額が減額となったため金額面で折合いがつかなかった。その為、実験内容を修正して新たにソフトウエアを開発することとし、サーバリース費も取止めてPCとした。それらの変更により若干の日程と出費の遅れが発生した。
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今後の研究の推進方策 |
「学習行動特性」と「学習態度」の相関に加えて「学習態度」と「学習効果」との相関も分析し,3者の因果モデルの仮説検証を最終目標とする.これにより、「学習態度」の形成的評価に基づくリアルタイム授業改善が「学習効果」に効果を及ぼすことができることを立証できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
実証実験回数を当初計画の想定よりも増加させ,より多くの検証データの収集を予定する.また,研究成果の発表についても,当初計画していた教育系学会だけではなく関連する心理学系学会も検討する.実験システムに関しは,ユーザビリティとデータ分析に関する機能を追加開発する.「今年度の執行額に残額が生じた状況」申請時点ではNEC製のコラボレーション支援システムを貸与してもらう予定であったが、認可額が減額となったため金額面で折合いがつかなかった。その為、実験内容を修正して新たにソフトウエアを開発することとし、サーバリース費も取止めてPCとした。それらの変更により出費の遅れ(減額)が発生した。
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