研究課題/領域番号 |
23650529
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山本 洋雄 東京工業大学, 社会理工学研究科, 研究員 (70345768)
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キーワード | 教育工学 / 教育評価 / リアルタイム授業改善 / 電子ノート / 電子教科書 / 形成的評価 / 5因子性格検査 |
研究概要 |
前年度に実施した実証実験のデータを分析した結果、当初の仮説どおり、模擬「電子教科書」を活用した授業において、学生の主要5因子性格検査(ビッグ・ファイブ)特性値と学習行動との間に以下の関連性が認められた。(1) 「外向性」が高い学生は、教師が提示するぺージと自分が参照する「電子教科書」ぺージの同期比率が低い。(2) 「勤勉性」が高い学生は、教師が提示するぺージと自分が参照する「電子教科書」ぺージの同期比率が高い。またリアルタイムでの状況把握に関しては、(1)毎授業後に実施する小テストと期末試験との関連が高い。(2)取分け、知識獲得的な語群選択の問題だけでなく、小論文での多面的な考察力をみる問題との関連もあることが判明。 上記に関してその成果を日本教育工学会の全国大会で2件の発表を行った。さらにリアルタイム性を高めるために、授業受講時にノートに筆記を多くさせる手法の検討を目的として、穴埋記述方式と自由記述方式を比較した。その結果、(1)穴埋記述方式では93.9%もの書込みがあった。(2)一方、自由記述方式は僅か14.0%であった。(3)テスト結果では自由記述方式に比べて有意に高いことが分かった。 本件に関しては東北大学での教育システム情報学会研究会で発表し、東京工業大学でのリスクソリューションプロジェクトの冊子にも報告をした。さらに、平成25年6月にオランダで開催されるECIS2013のWorkshop IEETeL2013での発表が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は松本未来学舎と信州大学経済学部のご協力を得て、順調に実施が出来た。 また、データ分析に関しても良い結果が出ており、学会でも既に3件を発表することが出来た。 平成24年6月にオランダで開催されるECIS2013のWorkshop IEETeL2013(査読済)での発表も決定している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度にあたり、H23年度とH24年度の実証実験データを総括し、学習者特性(ビッグ・ファイブ)と学習行動指標(閲覧ページ同期比率、ノート書込み量)との関係性を分析考察する。特に、「閲覧ページの遷移軌跡パターン」を新たな評価指標として検討するために、指標算定式を考案し評価する。対象とする独立変数に名義尺度項目が多いことを踏まえ、従来の共分散構造分析とともにベイジアンネットワーク分析も適用し両者の結果を比較照合する。併せてベイジアンネットワーク分析に関する有効性や有用性を検証考察する。また授業改善の一貫として、授業の途中で脱落する学生を事前に把握する目的で、学生のノート記述状況や小テスト、性格検査結果などを分析する予定である。 上記考察結果も踏まえ、学習者特性に応じて学習効果を向上させるために必要となる電子教科書/電子ノートの追加機能を構想提案する。そして、特定の学習者特性を有する学生を対象とした新たな電子教科書/電子ノート追加機能の有効性検証実験で、その一部を確認評価する。 以上、本年度の研究結果も含めた3年間の研究内容を、日本教育工学会や教育システム情報学会の研究会で発表し、論文投稿する。併せて、6月のオランダでの学会の結果も踏まえて全体のまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用額が37万円となった。主な要因は、本来はアルバイトを使ってデータ収集・整理をする予定であったものを、平成25年度にオランダでの学会発表が入ったため、研究協力者の六浦教授が自ら実施して頂いた為の経費節減であった。 なお、平成25年度は上記の節減経費も含めて、下記のように全額利用予定である。 平成25年度使用予定総額 1,361 千円。 《国内旅費》 570 千円。学会の全国大会・研究会参加 (延べ3人・回)。研究打合せ述べ15人・回) 《外国旅費》 311 千円 《謝金等》 200 千円 実験参加者への謝礼《その他・参加費》 その他・書籍》 30 千円 《その他・参加費》 90 千円 国内・海外学会参加 (延べ5人・回)《その他・実験システム利用費》 160 千円
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