平成25年度は主として,音楽教育における発声指導の場面を想定しての声の可視化を試みる実験を行った。被験者は20代の女性6名とし,そのうち1名は十分な声楽訓練を受けている「被験者分類A」,5名は基礎的な声楽訓練を受けている「被験者分類B」とした。各被験者において,「ア」と「ウ」の母音を用いて,261.6Hz~1046.5Hzまでの間の7音を発声について,「地声」と「頭声発声」の2パターンについて,音源探索装置による測定を行った。解析は,音声の主な成分が含まれる160~7600Hzの周波数で行った。その結果,「被験者分類A」の「頭声発声」は,卓越周波数成分の幅が広く,高音域成分が多く含まれており,頭部から胸部にかけて声が放射状に広がる傾向が見られた。発声の習熟度が異なると,声の放射場面の広がり方に差がみられることを視覚的に確認することができた。音程の違いによる声の発声部位の顕著な差は視覚的にとらえることができず,低音域でも高音域でも,胸部から頭部のあたりを中心に放射状に広がる傾向がみられることを明らかにした。「地声」と「頭声発声」の違いについては,個人差はあるが,「頭声発声」の方が,放射状の広がりが大きいことを確認した。「ア」と「ウ」の母音の違いについては,「ア」の方が,声が拡がる傾向がみられた。別の実験では,2名が同音で向き合って声を出すときや,完全5度音程や完全8度音程で声を出しているときに,声が2人の間の中央付近に声が集まっていることを視覚的に確認することができた。一部,楽器を用いての実験も行った。本研究は,(株)熊谷組と共同で研究を推進している。
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