システム開発の大規模化と複雑化に伴い、開発プロジェクトの組織の階層化や開発分担をプロジェクト計画時に周到に準備していても、納期遅延や費用の増大が発生している。この背景のもと、状況分析や保有知識による問題解決といったことを行うプロジェクトマネージャとしての論理的思考力を強化する学習環境をプロジェクトシミュレータとともに実現した。 シミュレータは、単にシステム開発プロジェクトの振る舞いを模擬するのではなく、指導者が設定した学習目標を反映した学習シナリオを「シナリオ創発」の考え方のもとに生成するために、状態遷移をベースとしたプロジェクトの動作モデルとそれに作用するエージェントモデルをもとに実装した。このシミュレータで、学習者がプロジェクト管理を比較的容易に行えるものや相当の思考が必要となるものを設定し、所望の学習シナリオが生成できることを確認した。 このような学習シナリオをもとに学習者が学ぶべきものとして、PMBOKなどに示されるプロジェクト管理としての「規範」を学ぶための仕組み、具体的なプロジェクトに対してオペレーションを実行した際の「改善点」を学ぶための仕組みの構築を行った。「規範」については、強化学習を用いてシミュレータから自動生成し、この「規範」と照らし合わせて、複数のプロジェクトに対する学習者の思考の問題個所を質問することで、「規範」を学ぶ機能を実現した。オペレーションの改善点の指摘は、学習者オペレーションの特徴を決定木の形で整理し、その中でよりよいオペレーションを同定するという機能から実現した。 「学習シナリオの生成」、「プロジェクト管理の規範の自動生成とその学びのための質問生成」、「学習者オペレーションの改善点の指摘」という機能を構築し、これらをプロジェクト管理で用いられるガントチャートをベースとしたインタフェースにより提供することで、研究目的を達成することができた。
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