講義や文章の内容理解を促進する有力な方法として注目されているノートテイキングでは,(1)キーワードやキーフレーズなどの「重要な情報」を取り出す「選択」,(2)選択された「情報間の関係」を見出す「内的関係づけ」,(3)内的関係づけの結果をさらに既有知識と関係づける「外的関係づけ」,が行われるとされている. 本研究では,ノートを構成する「情報」を「部品」として与え,それらを組み立てさせてノートを完成させる,といった内的関係づけに焦点を当てたノートテイキングの形態が有効ではないかとの着想に基づき,このようなノートテイキングの形態をノートビルディング法として定式化し,この定式化に基づいたノートビルディング活動を可能にするプロトタイプシステムの実装と,その試験的な運用までを行った. 具体的には,まず,元となる教師の講義ノートをプレゼンテーションソフトが一般的に定義している概念の階層構造として記述することを前提とし,そのように記述されたプレゼンテーションの1枚のスライド内の記述を分解し,部品化し,さらにそれを学習者に提供し,再構築を行わせることができるソフトウェアを実装した.さらに,このソフトウェアを利用する実験を行い,被験者がノートビルディングの活動を学習に資する活動として違和感なく行えること,講義ノートの内容を定着させるうえで効果があることを示唆する結果を得た.このソフトウェアはタブレットベースで利用可能になっており,一般的な教室においても使用可能なため,利用範囲の拡大を見込めると考えている.
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