研究課題/領域番号 |
23650543
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
廣瀬 英雄 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60275401)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 教育工学 / SSモデル / 学習支援システム |
研究概要 |
学習支援システムは教材の提供や課題提出にこれまで大いに利用されているが、学生の能力評価法についてはいまだに古典的テスト理論に依っているのが現状である。学生の能力を適切に評価するには学生の能力に合わせたテストを行なうのが最適であるが、学生の能力に対応した問題を自動的に提供できるシステム(アダプティブシステム)はまだそれほど確立されていない。新しいテスト理論である「項目反応理論」とアダプティブシステムの両方をテスト結果の評価に取り込むことができれば、大学・高校で利用できる学習支援システムの中に、公平で公正な能力評価法を確立させることができる。 本研究では、統計的信頼性解析の分野で用いられている「ストレス・ストレングスモデル」と心理学系で発展した「項目反応理論」を組み合わせ、学生の能力に自動的に適合するテストシステム(アダプティブシステム)構築の基礎を固めることを目標としている。 このため、平成23年度は、テスト結果にストレス・ストレングスモデルを用いた評価法の理論的側面を強化した。具体的には、周辺化法、ベイズ推定法の計算法を「項目反応理論」に取り込み、また「ストレス・ストレングスモデル」を組み込んだ場合の推定誤差の評価法を示した。更に昇降法によるアダプティブシステムをストレス・ストレングスモデルを組み合わせた理論展開もも行なった。また、両者、数値実験(シミュレーション)も行なって理論的側面の妥当性を確認した。 次に、実際に大学内で、高校の数学レベルの試験を課し、シミュレーションでは得られない問題点を洗い出し、その解決法について考察した。平成24年度は実際的なシステム構築に向けて研究を継続させてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の「研究の目的」:Moodleなどの学習支援システムは教材の提供や課題提出にこれまで大いに利用されているが、項目反応理論などの新しいテスト理論を用いた評価法はその中に取り入れられはいない。また、ストレス・ストレングスモデルを用いた学生の能力評価法は国内外でもない。そこで、1)ストレス・ストレングスモデルによる公平で公正な学生の能力評価法を開拓する。2)その評価法をMoodleなどの学習支援システムの中に組み込み、オンライン評価法を確立する。3)公平で公正な能力評価法として、大学・高校で利用できるシステムを開発し、流布させる。 平成23年度は上記の1)の項目を達成することであるが、これまでの研究発表によりおおむね達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画は順調に進んでいるので、平成24年度の当初の計画:アダプティブテスト法などを含め、Moodleなどのe-ラーニングシステムにこれを組み込む。このため、a) 学内の試験を想定してMoodleの中に入力フォームを作り、e-ラーニングシステムの動作を確認し、問題点を洗い出し、b) データベースに入ったデータをもとにして、リアルタイムで評価結果を出力できる評価プログラムの開発を行い、運用上の問題を洗い出して、問題点を解決する方法論を提案し、更に大きなシステムでも動作できるようにシステムの改善を行うという、平成24年度の当初の計画を進めたい。 しかし、Moodleというフリーのシステムに独自の評価システムを搭載することの困難さが分かってきた。このため、既存のe-ラーニングシステムに組み込むのではなく、独立した評価システムとしてのアダプティブシステムの確立を目指していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度研究費の未使用額¥27,000が生じた。その状況としては書籍購入予定等であったが納期時期について予定変更が生じたため、その実施については平成24年度の物品費(具体的には書籍購入)として加算して使用する予定である。その他は当初の予定どおりである。
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