研究課題/領域番号 |
23650546
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
池井 寧 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00202870)
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研究分担者 |
北澤 武 首都大学東京, 大学教育センター, 准教授 (80453033)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 教育工学 / 情報通信工学 / バーチャルリアリティ / 認知科学 / インタフェース / 記憶 / 学習 |
研究概要 |
本研究では,学習者の学習力を引き出すデジタル教科書の新機能を創出することを目的としている.具体的には,学習者に合わせたインタラクティブな学習支援機能と,他人の考えや理解を共有する機能,および遊びの要素を付加する機能を実現することにより,生徒の学習活動を支援するデジタル教科書の実現を目指している.本年度は,インタラクティブな学習支援機能を中心として開発を行った. モデルデジタル教科書に付随させる学習支援機能の1つとして,ワークシートの機能を実装した.ここで,ワークシートは教科書のページにポップアップで提示され,本文に関する要点などを記入することを可能としている.これは,教科書の本文でハイライトした文字列と連動した表示を提供するものである. さらに,記銘支援に関して,画像情報による記憶掛けくぎを生成する機能として,以下部分を実装した.即ち,教科書に選択単語・文章に関する画像を,インターネット画像サービス(Google image search service) により取得して提示し,ユーザが検索画像から選択する機能,この画像に対して,複数種類(図形化数字,平仮名の図形,人物)の記憶掛けくぎを任意のサイズで合成する機能,さらに合成した画像記憶掛けくぎを,教科書の中に配置する機能を実現した.この機能について,記銘効果を実験により評価した結果,本機能を用いた場合に有意に高い再生率が得られた. リハーサル支援について,選択した単語・文章の一部をマスクすることにより,記憶学習モニタリングを行い易い構成を実装した.さらに,記憶モニタリングのためのもう1つの仕組みとして,学習者が注目している部分に対する問題を生成する機能として,類義語からなる選択肢を提示する手続きを実装した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したことは,23年度の計画として設定したことの実現に相当しており,研究の進展経過として順調であるとみることができる. 即ち,ワークシートの機能を実装することにより,学習者が要点をまとめられる機能とし,画像による記憶掛けくぎをインターネット検索と独自の系列画像の合成によって生成する機能,および教科書の単語・文章のマスク設定と問題作成機能について実装を完了している.これらの一部の機能について,評価実験も実施している.さらに,複数の学習者の情報を扱う部分については,通信によりサーバにデータを保存する機能を実装しており,これらのデータを共有するための準備ができている. これらの成果から,目的として初年度に達成すべき内容は,ほぼ満たされている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,学習支援の効果について評価を行うことが可能なソフトウェアとして,各種の機能を統合し,学習者の学習経過のデータを蓄積する.これはクライアントとサーバに,学習履歴に関するデータを集積することと,それに基づいた教師の制御下におかれる共有画面を構成することを含む.他の学習者の学習行動を効果的に共有するための提示方法について議論するための実装が目標となる. これらの機能に関して,中心的な部分について,中等教育・高等教育を対象とした評価実験を実施できるようにソフトウェアを構成する.これを用いて,該当の教育機関の協力を得て,評価実験を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,システムソフトウェアの実装に関して作業負荷が高くなるため,ソフトウェア開発に関わる謝金とプログラミング外注に研究費を使用することを予定している.また,評価実験を行うための端末を購入して実験を実施するが,その際の被験者への謝金も計上する.研究成果を公開するための国際会議に参加する費用(旅費,登録費)も支出予定である.そのほか,論文投稿費を計上している.
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