研究課題/領域番号 |
23650549
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
舩田 眞里子 白鴎大学, 経営学部, 教授 (70137701)
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研究分担者 |
渋川 美紀 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (80285965)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 反復学習 / 達成度評価 / 生体情報 / 事象関連電位 / 脳波 / 学習曲線 |
研究概要 |
本研究は、「学習は個別作業であり、個人差が極めて大きく、個々の学習者に適した学習方法の選択が可能となるためには、個々の学習者の学習中の生理指標を適切に測定・評価できる尺度が必要である」という認識のもとに、「学習中の大脳活動を中心とした生理データを測定し、そのデータを適切に評価する方法(尺度)を定め、そのような尺度を学習者の個別の達成度評価に応用することを目的」としたものである。 1年目の研究では、計算課題を反復実行(学習)することにした。学習中の脳波を測定し、抽出データ加算平均法(Data Selecting and Averaging Method、DSAM)を用いてERPを測定した。DSAMは、標的とする電位(P3もしくはP300、課題提示後300ms付近に出現する正の電位)の分布を用いて、加算データ用の脳波を3クラスに分類し、それぞれのクラスの脳波を加算平均してERPを求める方法である。これにより、反復によるERPの変化を表すモデルを作成し、そのモデル上で学習効果を評価する尺度の作成を試みた。一方、学習の進捗を正答率から推定する学習曲線を求め、この曲線上で学習完了状態を推定するモデルを作成し、ERPと学習完了状態へ至る過程との関係を考察した。 本研究では、研究期間内に「(1)学習効果を評定するための適切な尺度を定め、その正当性を検証する」、「(2)異なる学習法による学習効果の違いを生理情報から検知できるがどうかを検証する」、「(3)学習完了状態を推定することは可能であるかどうかを検証する」、「(4)事象関連電位の代替となる生理指標(呼吸、体温、筋電図など)の有用性を検証する」ことを研究の目標としている。従って、れらの細目の(1)、(3)を現在までに達成したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究期間内に「(1)学習効果を評定するための適切な尺度を定め、その正当性を検証する」、「(2)異なる学習法による学習効果の違いを生理情報から検知できるカどうかを検証する」、「(3)学習完了状態を推定することは可能であるかどうかを検証する」、「(4)事象関連電位の代替となる生理指標(呼吸、体温、筋電図など)の有用性を検証する」ことを研究の目標としている。 すでに(1)の尺度は、モデルを定め、そのモデル上でのERPの変化からその正当性を検証した。その再現性の検証は本年度の研究の推進目標である。(3)の学習完了状態の推定は、学習完了状態を正答率から定義し、その変化に伴うERPの変化からその可能性を示した。 従って今後は、「(2)異なる学習法による学習効果の違いを生理情報から検知できるがどうかを検証する」ことと、「(4)事象関連電位の代替となる生理指標(呼吸、体温、筋電図など)の有用性を検証する」ことに重点をおいて研究を進める。 そのために、異なる学習法を設定し、課題実行時に脳波(ERP)だけでなく、導入した機器を用いて、他の生理的データも測定し、研究を推進する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、同一課題について、異なる学習法による学習効果の相違を検討する実験を行う。無学習、ICT機器を用いた学習、筆記による学習、暗記カードによる学習などを行う実験を計画し、予備実験後に、本実験を行う。事象関連電位と他の生理指標データを全て記録し、学習中の被験者の状態をポリグラフの形で記録する。この間の事象関連電位の変化と他の生理指標との間の関連性を調べ、学習効果の評定のための尺度の精度の向上をはかる。また、できるだけ少ない生理指標を用いた尺度を検討する。 研究成果は、論文の形でまとめ、国内および国際会議で発表するなど研究成果を公表することに努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究目的の細目である「(2)異なる学習法による学習効果の違いを生理情報から検知できるがどうかを検証する」ことと、「(4)事象関連電位の代替となる生理指標(呼吸、体温、筋電図など)の有用性を検証する」ことに重点をおいて研究を進める予定である。 そのため、研究の目的(2)では、事象関連電位測定のための消耗品としての脳波計用記録用紙、インク、電極ペースト、電極、心電図測定用のカルジオクリームなどが必要である。大量の測定データが得られるので、ハードディスク、MO、USBメモリ等の記憶媒体も必要である。また、成果報告を論文にまとめるに際して、結果の説得力と客観性の観点から少なくとも被験者12名の測定データは必要となる。研究目的(4)の事象関連電位の代替生理指標の探索では、呼吸、体温、筋電図の測定のための新たな測定装置一式を1年目に準備したので、それらの機器を用いて測定を行う。消耗品としてデータ保存用の媒体(ハードディスク、MO、USBメモリ等)も必要である。実験協力者への謝礼も(2)と同様である。 これらの実験と解析を行いながら、その結果を順次、国際会議、国内学会発表を行い、会議におけるコメントなども生かして、研究を続けたい。そのために、旅費・学会の参加登録料等が発生する。また、研究成果を論文としてまとめたり、最終的な研究報告書の作成にも印刷費等が必要となる。可能な範囲でこれらの費用に研究費を使用する計画である。
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