従来の授業研究では、教師や児童生徒の話し言葉から発信された文字化可能な言語情報を情報源として、プロトコル分析、カテゴリ分析がなされてきた。しかし、この方法では、韻律的な情報であるイントネーション等の変化によって表現される教師の意図や、感情に関わる情報が脱落してしまう。我々の研究は,この文字化不可能な言語情報をパラ言語と定義し、教室内で教師と児童生徒のコミュニケーションにどのように機能しているかを明らかにしようとした。この研究は、今回の科研費の研究になる以前に、研究をスタートさせ、少なくともパラ言語の存在を実験的に明らかにした(有賀,菊池、野嶋(2011,2011))。 一方で、我々は、eスクールという遠隔教育システムを開発し、生涯学習において実践的に利用してきている(野嶋、2012)。このシステムは、授業のライブ映像を実際の教材とし、できるだけナチュラルな授業場面をコンテンツとして利用している。我々は、授業のライブ映像を用いることが、早稲田大学eスクールが実践的利用に耐えている第一要因であると考えている。インストラクショナルデザイン的な発想ではなく。 従って、我々は、我々のライブ映像が、eスクールの教育実践に耐えられる要因を、ライブ映像におけるパラ言語的側面とソーシャルプレゼンス的要因とみなし、これらの観点からの調査を企図してきた。ソーシャルプレゼンス的な調査のための調査票は、ほぼ概要が出来上がりつつあり、項目の洗い出しが終了している。ライブ映像に見られるパラ言語的側面の抽出作業は、コンテンツごとの映像情報の差異が大きく平均値的な代表値を特定することが困難であり、コンテンツに含まれるパラ言語的側面の同定作業の方法論を模索している。
|