研究課題/領域番号 |
23650551
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浅田 匡 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00184143)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | リフレクション / 園内研修 / アクション・リサーチ / セルフ・スタディ / 幼稚園 / 現職教育 |
研究概要 |
幼稚園研修においても、現職教育で重要とされているリフレクションが鍵になる。リフレクションを効果的に行うには、1つは質の高い保育指導案の作成が重要であり、あと1つは保育者に自己内省を促す道具の提供が必要である。本年度は、質の高い保育指導案作成を支援する仕組みを開発するために、国立大学法人附属幼稚園の協力によって、3歳時から5歳児までの保育指導案(日案)を収集し、クラウドコンピューティングによる保育指導案提供の可能性を検証した。イントラネットレベルではあるが、保育指導案を保育者が参照することは十分に可能であることが確認された。しかしながら、参照した指導案の変更・改善をフィードバックする方法等は課題として残された。 また、自己内省を促す道具として、保育者自身によるチェックリスト作成及びそれによる調査を行う予定であったが、インタビュー調査から、保育者が考える保育における重要な項目が膨大であったため、実行力不全の観点から項目を絞り込むことができず、調査項目の列挙という形になった。実行力不全の観点に立てば、作成された項目をそれぞれの保育者が重要度によって6つに分類するため、項目数は20から25項目が妥当と考えられる。保育の設計・実施・評価段階ごとに項目作成も考えられるが、インタビュー調査を踏まえ、保育の評価という観点から、すなわち自己内省の観点から項目を再整理しているところである。これらの項目をチェックし、それぞれが実行できていない理由をコンピュータと対話することによって、保育者の自己内省を促すのである。 以上から、小規模である幼稚園のかかえる教員研修の問題の1つの解決方法として、保育者が自らの保育、あるいは園内の保育から学ぶためのリソースの基本的なデータの形が、本年度の研究により確かになったと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共同する幼稚園のネットワーク環境の制約がきびしく、予定したクラウドコンピューティングによる試行を十分には行えなかったことが、当初の研究計画よりも遅れた理由の1つである。また、実行力不全に関するチェックリストの作成は、インタビュー調査で項目が多岐にわたったため、園内研修に必要と判断される項目まで絞り込むことができず、調査実施にまで至らなかった。さらに、小規模である幼稚園において、保育者自身が自らの保育を研究するセルフ・スタディの導入が有効ではないかということが明らかになったため、当初の研究計画に加えて、セルフ・スタディの要素を加えようとしたために、計画の実施が遅れることとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに組み入れようとするセルフ・スタディに関しては、本年度4月にサンディエゴ大学で具体的な取り組みとそれに関する資料集を行い、どのように幼稚園研修に組み入れるかをさらに検討する。実行力不全に関するチェックリスト及び指導案の改善方法については、協力していただいている国立大学法人附属幼稚園の園内研修に参与観察に入り、保育者がより使える形にしたうえで、簡易クラウドコンピューティング・システムに組み込む予定である。本年度10月以降に試行を行う。同時に、当初の研究計画にしたがい、アクション・リサーチの1つであるアプリシエイティブ・インクワィアリーの考え方に基づく、管理職による保育指導を行い、メリットと問題点を探る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
昨年度未使用分は、サンディエゴ大学での活動経費に充てる予定であり、国立大学法人附属幼稚園での園内研修への参与観察のための旅費およびそこで収集されたデータ整理補助の謝金に多くを充てる。
|